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【読書記録】『甘くないケーキ』(『月とコーヒー』より)
『甘くないケーキ』(『月とコーヒー』より)
吉田篤弘著
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祖母は、森の中にある小さな一軒家に住んでいた。そこには「米と酒」という看板を掲げた食料品店と変電所の職員用の宿直所と「ゴーゴリ」という名前の喫茶店があった。やがて祖母が、亡くなり、孫(彼)は、祖母の遺品の整理をしていた時に見つけた祖母の書いた物語を読む。
キーワードを挙げてみる。
①喫茶店「ゴーゴリ」
喫茶店は、人々が集まり、交流し、アイデアを交換する場所であり、ゴーゴリの名を冠することは、文学や芸術についての対話が生まれる空間を意図していると考えられる。
喫茶店に訪れる人々が自己を見つめ直し、他者との関わりを通じて自己を再定義する場所であると考えられる。
②「甘くないケーキ」
甘さが通常、喜びや満足感を表すのに対し、甘くないケーキは、苦味や困難、現実の厳しさを象徴する。この対比は、人生の苦悩や挑戦を反映しており、幸福とは必ずしも甘いものではないことを示す。
甘さがないということは、表面的な満足感や快楽を追求するのではなく、内面的な探求や自己の真実に向き合うことの重要性を示唆している。これは、哲学者ニーチェの「苦しみを通じて成長する」という考え方にも通じる。
また、甘くないケーキは、物事の本質や真実への探求を象徴する。甘さを取り除くことで、見かけの魅力や一時的な快楽から解放され、本当に大切なもの—人間関係、自己理解、価値観—に焦点を当てることができる。このように、甘くないケーキは、人生の複雑さや深さ、真実への探求を反映する象徴として、多様な解釈が可能。
③「米と酒」
米と酒の関係は、また、生命と死、現実と幻想の対比を象徴する。米が生の象徴であるのに対し、酒はしばしば死や忘却、あるいは夢の状態を表す。このような対比は、人生の循環や人間の存在についての深い問いを提起する。
④「変電所」
人生における変化の受容や、状況に応じた柔軟な対応を考えさせる。変化は避けられないものであり、それをどのように受け入れ、活用するかが問われる。
物語の主題は何か?
ひとは、孤独、苦しみを通して成長する。そして、生命の儚さや、死を意識することが生きる意味を豊かにするのだと理解した。
短編集ですが、文章が非常に綺麗で、わかりやすくて、深みがある物語が多くて、オススメの一冊です。