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【読書ノート】『夜行観覧車』
『夜行観覧車』
湊かなえ著
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ひばりヶ丘という高級住宅地に住む遠藤家、高橋家、小島さと子の3家の視点で物語は、進む。7月4日零時頃、高橋家の主人・高橋弘幸が何者かに襲われ、救急車で運ばれ、その後死亡する。妻・高橋淳子は自首するのだけど、高橋家の次男慎司が、事件後、行方不明になっていることから、事件の真相が遠のいていく。
ドラマ化もされている。
キーワードとしては、タイトルの「夜行観覧車」を考えてみた。
①夜行
1.「未知」や「不確実性」を象徴する。夜の暗闇は、視界を制限し、先の見えない状況を示す。このことは、ひとが直面する不安や恐れを示す。
2.「自己探索」の旅を象徴する。夜は静寂と内省の時間であり、外界の喧騒から離れて自分自身を見つめ直す機会を提供する。暗闇の中での旅は、自己の本質や目的を探求する過程を象徴する。
3.「孤独」や「疎外感」というテーマも夜行に含まれる。夜行は、他者と一緒にいる場合もあれば、一人で旅をすることもある。このため、夜の旅は孤独感を強調し、他者との繋がりの重要性を問いかける要素となる。人は夜の中で自分自身と向き合い、孤独を抱えながらも他者との関係を模索する存在であることを示していると言える。
4.夜行は「移動」や「変化」を象徴する。列車が進むごとに、風景が変わり、時間が経過していく様子は、人生の移り変わりや成長を反映する。
②観覧車
1.「人生のサイクル」を象徴する。観覧車が上昇し、再び下降する様子は、人生における様々な高低や成功と失敗の繰り返しを反映している。この上下の動きは、喜びと悲しみ、希望と絶望、成長と停滞など、人生の多様な側面を示す。
2.「視点の変化」を表す。観覧車の頂上に達すると、普段の生活では見えない広い視野が得られる。これは、自己の内面を見つめ直す機会や、人生の全体像を理解する手助けとなりえる。
3.「コミュニティ」や「つながり」を象徴する。乗客が共に乗り合わせることで、一時的な共同体が形成される。この経験は、他者との関係性や相互作用の重要性を示し、孤独を感じる現代社会において、人とのつながりの大切さを再認識させられる。
4.「時間の流れ」も象徴する。ゆっくりとした動きと共に、周囲の景色が変わっていく様子は、時間の経過とともに変わる状況や経験を象徴している。
キーワードから見えてくるもの。
高級住宅地に住む幸せを絵に描いたような高橋家を襲った悲劇は、内部からの崩壊だった。そんな状況下でも、残された子どもたちは、淡々と描かれた幸せな世界を生きて行く。
物語の主題は何か?
究極的には、幸せとは何か?ということなのだと理解した。
日々与えられている恵みに、感謝して歩み続けることが、幸せに繋がる。
ドラマの方が、わかりやすいかもしれないけど、原作からは、だいぶ逸脱しているように思った。