【読書ノート】『カメルーンの青い魚』
『カメルーンの青い魚』(『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』より)
町田その子著
登場人物
さきこ:親に捨てられて、祖母に育てられる。
啓太:さきこと暮らしている。
りゅうちゃん:養護施設で育って、左官職人になっていたのだけど、親方が、亡くなってから、悪の世界に入っていく。
さきこは、啓太とみたらし団子を食べかけた時、前歯が、とれてしまった。実は、二本の前歯は、差し歯なのだった。差し歯になった時のことを思い出すと、行くへ知れずのりゅうちゃんが、目の前に現れるころから物語が、始まる。
りゅうちゃんとさきこは、幼馴染で、二人とも、親の愛に恵まれず幼少期を過ごしていた。世間に対してとんがって生きていたりゅうちゃんは、街を飛び出して、ヤバい世界のひとになって、何処かへ行ってしまっていた。
でも、さきこの祖母が、亡くなった時、りゅうちゃんは、さきこのもとに現れて、その時、さきこと結ばれた。そして、再びりゅうちゃんは、世の荒波の中に戻っていってしまっていた。
気になったキーワードを挙げてみる。
①メダカ:(ペットショップで青い目をしたカメルーンのメダカを買う)
1. 生の美:メダカは色鮮やかな姿を持っており、美しい存在として認識される。この美は、生命の輝きや多様性を象徴している。
2. 無私の生:メダカは自己犠牲的な生態を持っており、他の生物に餌として利用される。この無私の生は、愛や奉仕の精神を表現している。
3. 創造的な自然の力:メダカは繁殖力が非常に高く、短期間で数を増やすことができる。この力は、自然界の生命力や創造力を象徴しており、生命のサイクルや流転を表現している。
4. 平凡な営みの尊さ:メダカは自然界で一般的な魚の一種であり、平凡な存在として認識される。この平凡さは、ありふれた日常の中にも深い哲学的な教訓や意味が存在することを示唆している。ただし、このカメルーンからやってきたメダカにとって、日本での生活は、大きな冒険とも言える。
②差し歯とは何を意味するか?
1. 安定性と完全性の象徴: 歯は体の一部であり、欠如してしまうと日常生活において不便さを引き起こす。差し歯は、この欠落を埋め、体の完全性を取り戻すことで、物理的な安定性と完全性の象徴となる。
2. 自己意識とアイデンティティの保持: 歯は顔の一部であり、笑顔や表情に大きな影響を与える。歯を失うことは、自己意識に影響を与える。差し歯は、人々が自己意識やアイデンティティを保持し、他者とのコミュニケーションや社会的な関係を確立するのに役立。
3. 心の満足と幸福への道: 健康な体は、幸福や心の満足につながると認識されている。歯を失うことは、外見や自尊心にネガティブな影響を与える可能性があり、幸福感を損なうことになる。差し歯は、健康な状態や幸福感への道を模索する一つの手段として捉えられる。
4. 無常性と人間の経験: 歯を失うことは、老化や人間の無常性を思い起こさせる。差し歯は、物質的な残り物であり、人間の経験と時間の流れを象徴する。それによって、人々は現実の無常性や仮の性質についての哲学的な洞察を与えられる。
これらのキーワードから見えてくるもの。
カメルーンからやってきた2匹のメダカは、青い目をしている。
りゅうちゃんは、はじめ、この2匹のメダカを川に放そうとする。日本の環境で、頑張って生き抜け!という思いがあったのだけど、思い止まって、さっきの家で飼うことを提案して、物語が終わる。
この物語の主題は何か?
常識とは何か?普通とは何か?
得体の知れない世間の目に惑わされずに生き抜く力が大事なのだ。自分と同じように、周りと異なる存在を見つけたら応援するこころが、必要だということだと思った。
勇気を与えてもらえる物語だと思った。