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読んではいけない本「春にして君を離れ」 #30分でnote

読んではいけない本でした。

ミステリーの女王、アガサ・クリスティが書いた、「春にして君を離れ」。
Amazonのレビュー数は1200以上、★4.5。

「もう二度と読み返したくない」
と、
「一生大事に取っておくべき」
が、私の中で両立する本です。

この本を読んだとき、ちょうど私はある手術を受けて入院中でした。手術は無事終わって、暇を持て余していました。持ってきた本も全部読んでしまったし、テレビのワイドショーも見飽きていました。
そこで、ネットサーフィンをしていて見つけたのが、「アガサ・クリスティが書いた、人が死なない、ミステリーじゃない本」といううたい文句にひかれ、電子書籍を購入しました。
入院中に人が死ぬ話は読みたくなかったし、アガサ・クリスティなら面白いに違いないと思ったのです。

読み始めたら、見事、ページをめくる手が止まらなくなりました。

看護師さんが、数時間おきにバイタルチェックに来たり、食事を持ってきてくれるのですが、読む手を止めるのが惜しくて惜しくて。看護師さんが出て行くと、すぐさま、タブレットを手に取って続きを読み、その日のうちに一気に読んでしまいました。

感想。
読むんじゃなかった・・・・・・、です。
とんでもないものを知ってしまったと思いました。

(ここから、ちょっとネタバレなので、気になる方は読んでからどうぞ)

人は一人も死にません。なんなら事件も起きません。
主人公の女性は旅先で足止めをされ、そこで出会った友人との会話をきっかけに過去の様々な出来事を思い返します。そして、そこから彼女の邂逅と自問自答が始まります。
これが、読み始めたら止まらない。
そして、読み進めるうちに、どんどん自分自身の心の闇が掘り返され、えぐられ、白日の下にさらされます。
私は今まで人にちゃんと向き合って来たのか、傲慢な生き方をしてこなかったか。彼女の記憶の旅と共に自分の来し方に想いを巡らせます。
それははっきりいってものすごく恐ろしく辛い作業でした。
なのにやめられない。この女性はどうなるの? 私はどうなるの?

Amazonのあらすじには、ロマンチック・サスペンスと銘打っていますが、ロマンチックでもサスペンスでもありません。
完全なるミステリーです。彼女の心理描写をなぞりながら、自分自身というミステリーを解き明かす本です。
その上、最悪の「イヤミス(読後、イヤな気持ちになるミステリー)」です。衝撃のラスト。読後感は最悪。
私が自分の生き方に本気で後悔しはじめ、悔い改めようともがき始めたのは、きっとこの本を読んだあの日からだと思います。
読まなければ何も感じず生きられたのに。出会わなければよかった。
でも読んでよかった。
あれから、自分の傲慢な態度や、愛のない言動に気づくことが増えました。
まだまだ失敗ばかり。後悔と反省ばかりで、辛いことも多い。
でも、自分を客観視する視点を得られてよかったと思っています。

心の優しい人なら、「ああ、いるよね、こんな人ww」と笑い飛ばせるかもしれません。でも、どんな人にも少なからず、こういう闇の面ってあると思うんですけどね。
私には刺さりすぎて、読んで数年経ちますが、キズが痛すぎて、未だにこの本について語りきれずにいます。

あの痛みを忘れてしまったのか、最近ふと再読したくなったんです。
Kindle本でしか持っていないので、紙の本をこれからポチろうと思います。読んだら、また感想が変わっているかも。そしたら、また書きます。



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