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【独りよがりレビュー】成熟脳/黒川伊保子~脳の本番は56歳ってホント?

「脳の本番は56歳から始まる」と聞いて、あなたは何を思うのだろう。
私は「ほんとかよ~」と半信半疑だった。

だって、年々、記憶力がどんどん怪しくなっていて、昨日の夕飯も、3分前の夫からの業務連絡も覚えていられないんだもの。
目は老眼で見えないし、最近は耳も少し遠くなった気がする。
これで、脳の本番が56歳からと言われても、すぐに「そうか! 私もまだまだだな、やったるで!」とはなれない。

「脳の本番は56歳から始まる」の出典は、黒川伊保子さんの「成熟脳」という本。

黒川さんは、長年、AI(人工知能)の開発に携わり、言葉の語感をAIに学ばせる技術を開発する中で、人間の男女の言葉の感性の違いに気づき、深く研究してきた方なのだそう。

読み終えて分かった。

脳の本番が56歳である=人間の「感性」の本番が56歳である
ということだ。

人生は、できる、できないで推し量れるものではなかった。
できなくなる年齢に到達してやっと「見える」ものがあって、逆にできる時代には「見えない」ものがあるらしい。

「一生の脳科学」という章がある。
その中で、今日までの私の人生を知っていたかのように、悩んだり、迷ったりしたこと(40代の今ぶち当たっている悩みも!)を言い当てられた。

30代の惑い(失敗事例の蓄積)と40代のいら立ち(成功事例がふえていくものの、周りの理解が足りない)を乗り越え、脳は50代に本質を知る。

まさに、30代、40代(イマココ)は、そのとおりだった。30代の失敗の数々、思い出すだけで恥ずかしくて、頭を抱えるし、40代になって少しだけ世の中の道理が見えてきて、先の見通しが立てられるようになってきた現在、それを若い世代に伝えることの難しさに悩んでいる。
当然だが、著者は私の人生を知る由もない。
著者の言葉を借りれば、私が47年生きてきて経験してきたことは、実は、最初かそう体験するように脳にプログラムされているらしい。がくぜんとした。

まるで、RPGだ。
年齢というレベルに応じて、それぞれのイベントを攻略するRPG。

レベル10なら、これくらいの道具と武器で、あのダンジョンを攻略し、この村へ到達する。レベル40ならこれくらい、レベル60ならこれくらいと決まっている。ハッピーエンドに向かうのか、バッドエンドに向かうのかは、その人の能力と攻略の仕方次第だけれど、脳はレベル(年齢)に応じたイベントをちゃんと用意して待っている。
本人は自らの意思で、冒険を続けていると思っていたが、実は脳にプログラムされたRPGのマップを進んでいるのだ。

果たして、人生のRPGのゴールは何なのか。

その脳にしか見えないもの、その脳にしか出せないことば、それを見つけてこその「この世で唯一の装置」

となること。
人間の脳はアウトプットするために、旅を続けているのだ。

そのアウトプットの性能が一番いいのが56歳だと、黒川さんは言う。
失敗を積み重ねた、惑いの30代、成功事例が増えても周りがついてこない、いら立ちの40代を越え、50代は物事の本質を知る。
孔子は「五十にして天命を知る」と言ったそうだが、この天命とは、物事の本質のことだそうだ。
人は、物事の本質を知り「人生の達人」となる。
物事の本質を直感で理解し、成功に導く。
56歳を境に、脳の出力最大期はなんと84歳まで続くそうだ。

ここまで読んで、思い出した人がいる。
アン・ハサウェイ主演の映画「マイ・インターン」

この映画で、名優ロバート・デ・ニーロが演じるシニア・インターンのベン。若くしてファッション業界で成功したジュールズ(アン・ハサウェイ)の元で、インターンとして働くことになる。
落ち着きがあって、穏やかで、朗らかで、包容力があるベン。若い人々を温かく見守り、ときには彼の人生経験に裏打ちされた的確なアドバイスを与える姿は、まさに物事の本質を知っている、本物の大人。
彼の生き方は決して派手ではないけれど、人を愛し、愛され、穏やかに幸せに過ぎていく。
きっと彼は、84歳まで、素晴らしい人生を送るに違いない。
「理想の人生の達人」ではないか。

脳の本番は56歳から始まる

本を読み終えると信じたくなった。
56歳から始まる脳の本番。いったいどんなふうに世の中が見えるのだろう。先日47歳になった。56歳までまだ9年もある。

それまでは、大いに失敗し、大いに悩んで、大いにイラついて、脳の成長を促していこう。

わずか200ページほどの薄い本だけれど、ここには人生の羅針盤があった。これから先、人生の曲がり角で立ち止まるたび、私はこの本を開くだろう。

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RUMI
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