裏がないのにおもてなし 勘違いおもてなし旨味攻撃
3年前のFBでの自分のつぶやき。コロナ前でドイツ出張中の。若干加筆して転載。
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ドイツで食事していて思うのは、ここの飯はかなりシンプルで、肉とか野菜とか素材そのもの重視で、あまり、和食みたいに、旨味だの、食感だの、季節だの、見かけだのは気にしてないんじゃないかなとふと思った。
食文化として「雑」だというつもりはなくて、これはこれで、素材がうまいので、ドイツの肉料理は美味いし、それをビールで胃に流し込むのは最高の気分。
ふと思ったのは、日本はあまりにも「うまみ」依存が大きくすぎるのかなということ。長年の知恵の結晶の調理技術で、まずい食材でも、魚やキノコや海藻の出汁だの、肉の旨味だの、トマトみたいな野菜の旨味だの、何層もその旨味を重ねて、食べると唸ってしまうようなうまいものにしている。これでもかこれでもかと、旨味を展開させてくる。
一方、案外、歴史的に、普段そんなに食事に「うまみ」を経験していない日本以外の地域の人達には、その旨味展開技術が、素材の鮮度の目くらましみたいに捉えられないかなあとふと妄想した。内陸立地で辛くて有名な四川料理が、素材の鮮度を唐辛子や山椒でかばっているように。まあ、和食には素材そのものの味をひきたたす素晴らしい料理もありますが。
極論をいうと、まだまだ世界には、自分の食べるものが自分の想像の範囲内で、こんな味の食材をせめて塩くらいで味付けにして日々食べているひとはいて、その人達はその想像を越えた食事がでてくると、なにがはいっているんだろう、なにをどうして調理したらこうなるんだろうと、不安になるのかなと思う。
まあ、発酵文化や保存食文化(塩とか使っての)があるところだと、その食物保存のプロセスで発酵の旨味が加わったりして、旨味に理解あると思うが、シンプルに肉を焼いて、付け合せの野菜は野菜そのものの味がするやつで、それを硬い味があまりないパンとかで食べている、3食がそれだという文化は、この21世紀のグローバリゼーションになった現在でも存在するのでは?あるいは、塩辛いだけの単品のおかずを、大量の白いごはんでかっこんでいる文化とかも。
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人間の3割は味覚音痴だというが、自分もたぶんそうかなおもうし、微妙な旨味の違いは正直わからないが、やはり、ウニとか、カニ味噌とか、旨味が凝縮しているようなのがはいっている料理は美味いなと思う。できればそういうのを食べていたいと思う。
なので、外人日本訪問客で、味覚エリートな人達で、いろいろな食事に挑戦したいひとには、日本訪問の目的の大きなひとつが和食を堪能することだと思う。ぜひ堪能してほしいと思う。一方で、それ以外の「ノン味覚エリート」には、案外、訪日目的は別にあって、食は二の次で、自分が普段たべてる定番のシンプルなものがほっとするんじゃないのかな。
ラグビー・ワールド・カップ(注:この文章がかかれた2019年秋、まさに開催中だった)のプレスで、ピーナツバター味のパン(上のタイトル写真)が外人メディア関係者で人気だというTwitterを、日本のメディアは、「やっぱり日本のものはなんでも美味くて外人にも大人気」という脈絡で報道していた。
そのツイッターよく読むと、イギリス人?らしいひねったコメントになっている。
*イギリスのまずいやつ、発酵系のパンとかに塗るやつ(拙注)
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バベットの晩餐、だったかなという小説では、北欧のプロテスタントの人たちが、パリから来た一流シェフの想像を絶する美食を、おいしいと思ってしまうと、神でなく快楽の悪魔の誘いを選んだことになるからおいしい振りはしないでおこうと村人で申し合わせてという話だったが(実はおいしくていい気分になっていく)、その本を読んで、食べるということに、食いしん坊民族である我々日本人と違う意味合いをおいている人たちもいるんだなと納得した記憶あり。
おそらく、すべての訪問外人客が、うまみたっぷりの寿司やラーメンを毎日よろこんで食べると思うのは、我々の思い込みであって、寺や神社は好きだけど和食は苦手という人もいるだろうし、和食も好きだけど毎日はかんべん(パリにいった日本人が毎日ヘビーなソースはかんべんとラーメン屋にいくような)という人もいるだろう。ラグビーみにきたので、観戦中はいつものビールとごく普通のピザという人もいただろう。
たしかに、うまみは味覚のひとつで、人類としては共通の心地よい化学反応かもしれないが、その楽しみ方の度合いはいろいろあるんじゃないかと思った次第。
ドイツは、朝飯のパンとかソーセージとか芋とか、結構シンプルなのがおいしいとつくづく思う。
この点で、本当のおもてなしは、日本人がうまいとおもうものを押し付けるのでなくて、旅のインフラとしては、彼らがいつも慣れ親しんで食べてるものを再現してあげるのも大事かと思った。その選択も提示する。それはムスリム用ハラル食だけでなく、食に無頓着な肉とシンプルな野菜グリルに塩みたいなニーズも含めて。
日本の「おもてなし」、まごころからで、裏はない気持ち、おもてがないのに裏もない、というのはダジャレだが、あくまでも休息・休暇でお金をかけて来てもらうインバウンド旅行、こんな気配りももしかしたら必要かなと思う。
(加筆)
旨味ってとりすぎても体には悪影響はないものだろうか?マーガリンがかつて、夢の、植物性のバター・油で健康だと思っていたらコレステロールを上げる悪影響があったように?おいしくて高級なものばかりたべていると、プリン体で痛風というのはよく言われるが(イテテ、あれは痛い)。毎食うまみを重ねた料理を食べてばかりより、粗食しながら時に強烈な旨味を味わうというようなのがいいような気もする。