可愛く歩いてる子が強いんだよね
「ねえ最近始めたんだけどさ、」
深夜1時 土曜日になったばかり 平日はお酒を飲まない彼女が 唐突に連絡してくるのはもう慣れた 休みの前日は何だかそれを待っている自分もいて 何で待っているかは明確にしたくなくて 彼氏にだったら「ごめん」を付けるようなことを 彼氏にしかしない温度感でやってのける そんな彼女がある意味羨ましかった 他所ごとは考えないようにして 今日も話が3周するまで付き合おうと決めた
「それで今週の日曜日はね、あもう明日だ、明日はね3歳の馬が出るやつなんだけど、」
「馬って何歳から走れるの?」
「一応2歳でデビューらしいよ、若いよね」
やけに詳しい馬の情報は 最近できた彼氏の趣味だろう 飲み込みがはやいのは昔からだが 男の影響で始めた趣味を 昨日今日覚えたような知識を 真っ直ぐに披露するその感じもまた 羨ましかった
「ねえ今度みんなで行こうよ、結構可愛いよ」
「馬って可愛いって単位なんだ」
「そう(笑)可愛い子が強いから買お」
ビギナーズラックを掴んで離さない姿勢も とても羨ましかった