【小説】将棋、人類、閉じた宇宙
黒い背景に「しばらくお待ちください」とだけ表示されていた画面が切り替わって、明るくなった。上品な和室に、将棋盤を前にして、スーツを着たふたりの男性が、真剣な顔をして向かい合っている。右側に座っているのは、眼鏡をかけた中年の男性。左側には、少し太り気味な20代の男性。真正面には記録係の若い男の子が正座をして、退屈そうに顔を下に向けていた。
「みなさま、おはようございます。この時間は、東京千駄ヶ谷の将棋協会”霧の間”から、明王戦本選第三局、羽田与志雄二冠対里田広志六段の対局をお