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書評 御成敗式目 鎌倉武士の法と生活  佐藤雄基

御成敗式目といえば、歴史の授業で耳にしたことはあるが、詳しいことはあまり知らなかった。それが気になるワードになったのは、以前から拝読している池田信夫氏のブログで取り上げられたのがきっかけだ。

池田氏は、丸山眞男の「古層」や山本七平の「空気」といった日本人論にふれながら、このブログが書かれた時期に問題なった原発再稼働が、法的な力ではなく、当時の政治の要請にとって停止された問題を引き合いにしつつ、「御成敗式目」のような「法」がありながら、英国でマグナカルタが作られた1232年に成文化されたに根付かなった点を指摘していた。

佐藤氏の著作は2023年刊行で、丸山や山本の評価に触れているほか、池田氏がブログで記した後、15年~16年の安保法制時に立憲主義の立場から、御成敗式目を評価する向きについて触れているが、山本の試みや戦後の象徴天皇制をめぐる考察などを含めて、「自分の主張を根拠づけるために歴史を利用する動きが、立場を問わず確認される」を最終章にて警鐘を鳴らしている。そのうえで「式目をどう受容して、自分たちの歴史をどう描いていくのかは、結局のところ私たち自身が何であるのかという問題である」とし、「古典」としてとらえることが必要と説く。あくまでその時代の背景を踏まえて、評価していくべきだとの立場である。

鎌倉幕府三代執権の北条泰時のときに制定された武家のための法が、時の京都の朝廷との関係、女性、家、身分といった当時の状況、また度重なる飢饉などで、式目の有様が浮き彫りにしていく。「法」のあり方を考えるうえで、極めて有用な1冊である。

#書評 #歴史 #法学 #御成敗式目