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書評 BECOMING HUMAN マイケル・トマセロ著
昨年からじっくりというか、あまり英語も読めないのだが、何とか読み進めてきた。日本語訳すると、個体発生の理論というサブタイトルが付されているが、人間がどのようにして形成され行くのかを、チンパンジーやボノボといった同じ霊長類と比較しながら、考察している。近そうで近くない、人類とこれらの生物のゼロ歳から7歳までの時期に注目し、 その過程を詳細に追っている。
著者のトマセロの考察では、人間とこれらの生物を区別する事項として、社会的認知、コミュニケーション、文化的学習、協調的思考、コラボレーション、社会性、社会的規範、道徳的アイデンティティ―の8点を挙げている。そして、人類が発達したキーワードの1つとして、とらえているのが「個体発生」である。集合意識は人間に固有のもので、それは遺伝的ルーツを持ち、社会のなかに蓄積され、このことが人類が他の霊長類と異なり、さまざまな領域で進化を遂げてきた背景にあると指摘している。
人間の子供の成長過程に関してまとめていると同時に、人がなぜ他の霊長類の生物と違った形で発達・進化を遂げているのかを示し、加えて、文化、認知、およびコミュニケーションなどへの全体的なアプローチがまとまっている本。じっくりとでも良いので、我々の成長の過程=人間としての形成過程を知るためには、読んで損のない本である。