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書評 反日種族主義 日韓危機の根源 李 栄薫

この本が出版された韓国では物議を醸しつつベストセラーとなり、アマゾンでも、韓国・北朝鮮の地理・地域研究のカテゴリーで1位となっている。著者のほか、韓国のジャーナリスト、学者が参画、日韓問題の火種となっている慰安婦や徴用工、竹島といった問題について、事実を丹念に検証してまとめ上げている。

著者が危機感を持っているのは、誤った歴史認識のもと、政治が進められ、時には建造物が壊されたり、「親日」的な勢力を排除するための施策、あるいは教育が着々と進められていることだ。著者はカテゴリ朴正煕政権下で学生運動に参画、「自由」を求めるために活動してきた経験を持つ。本を出すきっかけとなったのも、こうした「反日」をてこにした政治の進め方や、社会のあり方に危機感を持ち、「自由」が奪われていることに警鐘を鳴らす。とりわけ、文在寅政権が北朝鮮の政権にやや融和的な姿勢を示していることについて、「自由」が奪われるのではないかと危機感が、同書の執筆者の複数に共通している。今後の朝鮮半島の情勢を見ていくうえで、「自由」の視点は重要だと感じた。

また、歴史問題を見ていくうえで、当時の中国大陸、東南アジア、また米国との関係をきちんと考慮に入れておくことも重要だと感じた。今後の日本の外交を考えていくうえでも大事だ。「日韓関係」という枠組みだけでとらえると、「謝るか」「謝らないか」といった視点に陥りがちだが、複数の国家が絡む「政治的ゲーム」ととらえると、見方も変わってくる。その点で、韓国が何度も「過去」を蒸し返すのは、政治的ゲームの一環と納得できる。単なる「嫌韓本」をより、韓国政治史から韓国の現実を知れる良書だった。

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