がんばっちゃうもんね
あの人の話を久しぶりに聞いた。
あの人は私が元気だと聞いて
「幸せそうなら良かった」と言ったらしい。
その顔と声色がなんとも良かったと居合わせた友達は言った。
「幸せそうなら良かった」という言葉選びがとてつもなくあの人らしく、懐かしくなった。
私がどこかで幸せにやっていることを喜んでくれる人が、この世界にひとりいるってだけ。
それだけで私は生きていけるなーと思う。
だから言いたい。
私も、大切に想ってるよ。
今も変わらずでっかいカラダに熱い野心を抱えて、繊細な創造をしていると良い。
まっったく変わっていたって、たくさん食べてたくさん笑っていればいい。
大概恋愛に自信がないし、〈恋愛関係〉という値の中で他者と繋がったり、自分をさらけ出すことが苦手だ。
だけれど、あの人との日々はたしかに、私の中で思い出に変わり、例のごとく美しさを増している。
ちょっと前まで「彼」だった人称が「あの人」になった瞬間を、私は知りたくない。
いい恋をしていたのだなーという安堵と
すっかり過去になっていたことへの寂寞。
初めて使った言葉は驚くほどしっくり来て、この時のためにとっておいたかのよう。
入り混じった感情に名前を付けられた自分は、なんだか大人っぽい。
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