しゃがみ込み途中で膝痛を生じる症例(2)
以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。
情報)
20代の方である。
しゃがみ込み途中やしゃがんだ状態からの立ち上がり途中、高い段差の昇降で左膝痛が出現する。
痛みの部位は、左膝蓋腱内側の奥で、ズキンとした痛みである。
既往では、6年前に左ACL損傷により手術を施行している。
Q) 原因は?
A) 膝蓋腱の後面に付着する膝蓋下脂肪体の伸張が考えられる。
その場合は、膝蓋下脂肪体の硬化、あるいは半月板の動きと関係してくる。
また、ACL損傷による手術を行っているので、ACL付着部での伸張ストレスがある。
Q) 膝蓋下脂肪体の伸張とACL付着部での伸張ストレスのどちらの可能性が高いか。
A) 膝蓋下脂肪体の伸張の場合は、大腿四頭筋の収縮により半月板を前方に引き出す際、半月板の後方に付着する半膜様筋や膝窩筋の緊張により半月板の前方移動を抑制するため、半月板と膝蓋腱をつなぐ膝蓋下脂肪体が伸張されて痛みが起こる。
そこで、ハムストリングスの左右差を比較したが、内側ハムストは左が右に比べ低下していた。
よって、膝蓋下脂肪体の伸張ストレスによる痛みの可能性は低い。
ACL付着部での伸張ストレスの場合、脛骨の前方偏位が大きいとACLは伸張される。
そこで、痛みが出現する肢位で左右の脛骨の前方偏位の程度を触診で調べた。
すると、左が右に比べ脛骨の前方偏位が大きかった。
よって、脛骨の前方偏位がACLを伸張させ、付着部に伸張ストレスをかけたことによる痛みの可能性がある。
Q) アプローチは?
A) 萎縮した内側ハムストを強化して、脛骨の前方偏位を押さえ、ACLへの伸張ストレスを押さえる。
Q) 方法は?
A) 腹臥位にさせて、下腿内旋位で膝関節を軽度屈曲にさせる。
この時、セラピストは下腿遠位から抵抗をかけ、本人に膝関節が伸展しない様に保持させることを3秒間を休みを含めて5分間行った。
アプローチ後、内側ハムストの肥大があり、exの効果を確認した。
Q) 結果は?
A) 中腰姿勢で、左脛骨の前方変位は減少していた。
本人の痛みの訴えは、アプローチ前を10としたとき、5に低下した。
Q) 何故、中腰で痛みが出現したのか?
A) 膝関節と重心位置が遠位なため、大腿四頭筋への負荷が大きく、その収縮により脛骨が前方偏位した。
Q) 何故、左内側ハムストリングスが萎縮したのか?
A) 症例の歩行は、左立脚期でKnee inであった。
これは、Knee inにすることで膝には内反の力がかかる。
歩行時の前額面前面の左下肢の動き略図
それを押さえるためにLCLや腸脛靱帯、大腿二頭筋が働く。
これにより、大腿二頭筋優位の活動になり、内側ハムストリングスの収縮量が減ったと考える。
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