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膝におかしな感じがある症例
以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。
情報)
歩行で左膝が外側スラストしている感じがある。
![](https://assets.st-note.com/img/1724656691700-X8fNSM59se.png)
※実際、左膝関節の外側スラストはない。
長距離歩行では、左膝関節内側に重い感じがある。
そのようになってから左足にベンチが出来るようになった。
![](https://assets.st-note.com/img/1724656774508-wXl2hvVaoP.png)
背臥位で寝ていると左膝が過伸展して沈み込む違和感がある。
立位で体幹を左右に回旋させると、左膝関節がはまっていない感じがある。
![](https://assets.st-note.com/img/1724656831313-zhrytgWXsF.png)
右回旋 左回旋
きっかけは、数年前にリハビリ学校の授業で、左片麻痺様の歩行を30分ほど実施してからである。
実施した片麻痺様歩行)
![](https://assets.st-note.com/img/1724657045096-Vvb0bvKhJb.png)
Q) 原因は?
A) 訴えで共通するのは、左膝関節の違和感である。
ここで、違和感は関節のズレから起こる。
それを踏まえて、きっかけとなる歩容を見ると、左膝関節には後方・内反の力がかかる肢位であった。
![](https://assets.st-note.com/img/1724657250937-T6bRQ4bRFS.png)
これにより、後方・内反を押さえる組織が伸張された結果
歩行で外側スラスト様、臥位で膝関節過伸展様の違和感が生じたと考える。
Q) 長距離歩行で左膝関節内側に重さを感じるのは?
A) 内側の継続的は圧迫により、骨へストレスがかかった可能性がある。
Q) そうなってしまう要因は?
A) 膝関節を安定させる力が最も強い、靱帯の緩みである。
Q) 評価では?
A) 内外反ストレステストは陰性だった。
後方引き出しテストでは、陽性ではないが、左右差で左に緩みがあった。
また、視覚でも、左右差で左が右に比べて脛骨が後方に位置していた。
![](https://assets.st-note.com/img/1724657559146-v0ZmCBWcjL.png)
※脛骨粗面と膝蓋骨の位置関係に注目
Q) PCLが緩んだ原因は?
A) PCLが緩んだと言うよりも、脛骨を後方に移動させることで、PCLを緊張させて、膝関節を安定させたと言った方がよい。
理由は、きっかけとなる歩容で、後外側組織の緩みによる対応と考える。
![](https://assets.st-note.com/img/1724657690428-EcEIsXXNP2.png)
Q) 脛骨を後方に移動させたと言うことは、下腿を後方に引っ張るハムストの状態は?
A) 視診と触診で左が右に比べて肥大していた。
![](https://assets.st-note.com/img/1724657742308-UwnwbLBwO9.png)
Q) 数年間も症状が出現していることから、PCL利用だけでは不十分と考えられる。
他の膝関節安定化組織を強化すれば変化する可能性があるが、他の安定化組織の状態は?
A) 膝関節安定化には、ハムスト以外に大腿四頭筋、腓腹筋がある。
評価で、腓腹筋に萎縮があった。
![](https://assets.st-note.com/img/1724657887740-qMDa2VmSqB.png)
左は右のような縦の膨らみがなく、筋が横に広がっている。
萎縮はあるが、それほど大きくなかった。
Q) 他には?
A) ハムストによる脛骨の後方偏位が本来のアライメントから逸脱し、膝の違和感を招いていたのでないかと考えた。
Q) ハムストの緊張がPCL伸張のため以外に働く理由は?
A) 筋連結から考えると、ハムストからつながる体幹筋の安定化である。
![](https://assets.st-note.com/img/1724658131684-cecjWmWf1J.png)
ハムストは起立筋につながる。
そこで、背部のインナー筋である多裂筋の萎縮を代償しているのではないか? と考え触診したが問題なかった。
試しに、他の体幹インナー筋についても調べると、腹部筋群に問題はなかったが、横隔膜が付着する左の下部肋骨の動きが右に比べて少なかった。
吸気・呼気時の胸郭の動き)
吸気・呼気の差で、肘頭と胸郭外側の間隔の左右の違いでも確認できる。
![](https://assets.st-note.com/img/1724658315032-xqQ9uK2PgO.png?width=1200)
吸気 呼気
Q) 横隔膜とハムストの関係は?
A) 体幹インナー筋低下に対する起立筋を介した対応である。
Q) アプローチは?
A) 左肋椎関節の可動域を拡大してからの腹式呼吸である。5分間実施。
![](https://assets.st-note.com/img/1724658768161-O4scUXVxVp.png)
![](https://assets.st-note.com/img/1724658784420-F1UvR6jjjj.png)
Q) 結果は?
A) アプローチ前の歩行の違和感を10とすると3~4に減少した。
また、視診で左脛骨の後方偏位も減少していた。
![](https://assets.st-note.com/img/1724658895327-xaPpXjAWCT.png?width=1200)
ここで、先ほどペンディングしていた腓腹筋についても、つま先立ち運動でアプローチしてみた。5分間実施。
![](https://assets.st-note.com/img/1724658956400-dMwhGZLufP.png)
Q) 結果は?
A) アプローチ前の歩行の違和感を10とすると0~1に減少した。
体幹アプローチ以上の効果があった。
そして、脛骨の後方偏位は最も減少していた。
![](https://assets.st-note.com/img/1724659037697-9u17B2WDT9.png?width=1200)
ここで見えてきたことは2点
① 障害部位に近い組織へのアプローチが効果が高い。
② 脛骨の後方偏位(本来のアライメントから逸脱)も原因の一つにある。
Q) ところで、ベンチについては?
![](https://assets.st-note.com/img/1724659147103-4dXYUkFfMp.png)
A) ベンチは膝の症状が出現してからである。
ベンチが出来る原因は、骨と床の間で皮膚が過度に剪断・圧迫・捻転されて起こる。
歩行で前足部がわかる位置で観察すると左が右に比べてToe inであった。
![](https://assets.st-note.com/img/1724659198825-2N9inQ0Drn.png)
また、矢状面では両膝関節は屈曲していた。
![](https://assets.st-note.com/img/1724659234324-Xdp5UEg4dN.png)
Q) ここからわかることは?
A) 蹴り出しは母指で行なわれる。
Toe outでは、ほっといても母指に荷重される。
ところが、Toe inでは、しっかり母指に荷重されず、母指よりも外側になる。
そこで、母指へ荷重を導く内側縦アーチや前足部横アーチを見ると内側縦アーチは左が右に比べて高い。
![](https://assets.st-note.com/img/1724659366218-deqBSqSdMX.png)
足背部の左が右に比べて勾配が急である。
これにより、中足部から前足部への荷重移動は早くなり、その分、荷重を受け止める前足部への負担も大きくなる。
Q) 以上をまとめると?
A) toe inにより母指より外側で蹴り出してしまう。
※正確には母指球で蹴り出すので、母指球の外側
また、内側縦アーチが高い事による急激な前足部荷重の2点からベンチが出現した。
![](https://assets.st-note.com/img/1724659502425-LM0iarKxDh.png)
Q) アプローチは?
A) 左内側縦アーチを低下させる、あるいは、左Toe inを減らす。
ここで、内側縦アーチだが、触診では硬く、筋と言うよりも骨靱帯性の問題であった。
そこで、Toe inであるが、矢状面から見ると、膝関節は屈曲している。
![](https://assets.st-note.com/img/1724659621539-g17X0RVRqx.png)
膝関節が屈曲していると、靱帯が緩み、下腿は回旋する。
下腿をわざと内旋(Toe in)させていると仮定すると、それは、PCLを緊張させることができる。
![](https://assets.st-note.com/img/1724659655262-exskCdoxwE.png)
すると、前述の膝関節の要因につながる。
そこで、各アプローチ後の歩容を比較すると、わずであるが、toe inが減っていた。
![](https://assets.st-note.com/img/1724659703071-CW2X7kPiuc.png)
※踵と母指をつなぐラインの傾きに注目
そこで、効果が高かった腓腹筋へのアプローチで様子を見る。
1日1回、5分間の左踵上げ実施してもらった。
1ヶ月後、本人に会うと膝のおかしな感じは消失し、ベンチも減少したとのことである。
最後までお読み頂きましてありがとうございます。