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『稲盛和夫一日一言』 11月20日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 11月20日(月)は、「許す心」です。

ポイント:許せないものを許そうとすることは、人間の感情において最も厳しい葛藤(かっとう)のひとつ。これも修行のうちととらえて乗り越えていくことが、何よりも心を高めることにつながっていく。

 2009年発刊の『働き方』(稲盛和夫著 三笠書房)の中で、「愚直に、真面目に、地道に、誠実に」働くことの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 人が易きにつき、驕り高ぶるようになってしまいがちなのは、人間が煩悩(ぼんのう)に満ちた生き物であるからです。そのような人間が、心を高めていこうとするときに大切なのが、悪(あ)しき心を抑えることです。

 人間の煩悩は、百八つもあると言われています。中でも、「欲望」「怒り」「愚痴」の三つは、卑しい心、つまり人間を苦しめる煩悩の最たるもので、心にからみついて離れず、取り払おうとしてもなかなか拭(ぬぐ)い去ることはできません。
 お釈迦様は、この三つを「三毒(さんどく)」と呼ばれ、人間を誤った行動に導く諸悪の根源とされています。

 「人よりも多くの金銭を手にしたい」「人よりも高く評価されたい」といった「欲望」は誰の心にも潜んでいて、それがかなわないとなると、人は「怒り」を覚え、「なぜ、思った通りにならないのか」と「愚痴」や「不平不満」をこぼすようになる。人間とは、常にこうした三毒に振り回されて生きている、因果な生き物なのです。

 生きていくうえで、この三毒をまったくゼロにすることは不可能です。なぜなら三毒は、肉体を持った人間が生きていくためにはどうしても必要な心だからです。人間が生き物として生きていくうえで必要だからと、自然が本能として与えてくれたものなのです。

 例えば、自分という存在を守り、維持していくためには、食欲をはじめとする「欲望」や、自分を攻撃する者への「怒り」、さらには自分が思うような状態でないことに対する「不満」などを払拭することはできません。
 しかし、それが過剰になってはいけないのです。だからこそ、三毒を完全に除去できないまでも、まずはその毒素を薄めるように努めていかなければなりません。

 そのための唯一無二の方法といっていいのが、一生懸命に「働くこと」です。自分に与えられた仕事に、愚直に、真面目に、地道に、誠実に取り組み続けることで、自然と欲望を抑えることができます。夢中になって仕事に打ち込むことにより、怒りを鎮(しず)め、愚痴を慎むこともできるのです。また、ようのように日々努めていくことで、自分の人間性も少しずつ向上させていくことができるのです。(要約)

 名誉会長は、ともすれば悪い心にとらわれがちな自分を戒めるため、自分に自戒の儀式を課すことを続けてこられました。それは「反省ある毎日を送る」ということです。

 私も、ある研究開発プロジェクトのリーダーを任されたとき、アンガーマネジメントについて勉強したことがあります。

 アンガーマネジメントは、1970年代にアメリカで提唱・開発された、「怒り」をコントロールするための手法で、人間が持つ自然な感情の一つである怒りと上手に向き合っていくために研究されたものです。怒りについて理解し、取り組むことで良好な人間関係の維持や、職場でのチームワーク、生産性向上が期待できるとされています。

 その入り口で学ぶのは、「怒ること」と「叱ること」の違いです。「怒る」と「叱る」は、似ているようでいて明確な違いがあります。「怒る」ことは、自分の感情を発散させ相手にぶつけることですが、「叱る」ことは、叱る相手をおもんばかり成長を促すことを目的とする行為です。

 驕り高ぶり、慢心、そうした悪い思いが自分の中で頭をもたげてきたときには、すぐに反省の機会を持つ。そして日々自省自戒することで、新たな気持ちでまた謙虚な姿勢を忘れずにやり直そうと心に誓う。
 まずは、自分の言動に抑制をかけていく習慣を身につけていくことが大事なのではないでしょうか。


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