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何に対してお金を払う?船の契約で保証する3項目 造船のおもしろ豆知識集#14

導入編はこちら↓

貨物船の売買契約について考えてみます。
契約では数十億という巨額のお金のやりとりが発生します。これは容易に想像できるかと思います。
さてこのとき販売者と造船所と購入者(船主など)には保証する項目がいくつか存在します。巨額のお金を出す側としては、ちゃんとしたものでないとうけとれないからです。

具体的に保証する内容をみていきますと、下の3つの技術的な性能、それに加えて納期です。保証というのはその条件が満たせていなければペナルティがあったり、最悪受け取り拒否になってしまうもので、造船所にとってとてもシビアです。クレームどころではありません。
その3つというのが以下です。

1.速力(スピード)
2.エンジンの燃費
3.載貨重量

これはつまり、仕様書で約束した重量の貨物を載せれることができて、その載せた状態で約束したスピードが出て、約束の燃料消費である(無駄に燃料を消費してない)こと。これらの3つが全部成立する必要があります。そしてこれらを満たしていることに対して顧客はお金を払っています。

1の速力について、速力試験では、計画の喫水で(=積んでいるのは水だけど計画の積載量と同じ条件にして*)、エンジンが定常出力、の条件で実際の海を走ったとき、計画どおりのスピードが出るか計測します。       * 同じ条件にできないときは計算で補正したりもします。

2の燃費は、エンジンの出荷前に工場で試運転して正確な燃費(g/kWh)を計測します。
なぜ海上で測らないのか、と思いませんか?それはまず、燃費計測には馬力を測る必要があります。船というのは、エンジンが船に搭載し据え付けられて軸やプロペラが装備されてしまうと、クルマみたいシャシーダイナモのような”装置”に乗せたりというわけにはいかず、正確な馬力計測が困難なのです。回転数は正確にわかるのですが、トルク計測が問題です。実は、軸の微小なねじりを検出してトルクを算出し馬力も算出できる軸馬力計というのがあるのですが、誤差が生じるため、燃費保証に使うほどの正確性はありません。
そのため、船に搭載前の工場の段階でエンジン出力や燃費を計測するのです。

3については、「重量重心査定試験」で重りを載せた時の喫水変化を調べることで軽貨重量(空載状態)がわかります(すいません、この項目については詳しくないです)

私が所属していた機関部設計で特に関係があるのは燃費です。顧客から問合せがあったとき、計算して回答するのですが、燃費にかぎらず保証値というのは重要な値なので、ぜったいに間違ってはいけないものでした。

以上、自分の思い出も含めて、保証にかかわる技術的な性能についての説明でした。

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