馬力があるとは? 造船のおもしろ豆知識集#10
導入編はこちら↓
今回は物理の時間です。
いきなり結論からいいますと、馬力(出力)は、
「トルク x 回転数」
です。トルクについては後述します。回転数は一分間に何回まわるか、まわる速さです(rpmといったりmin-1と書いたり)。
これ、技術系の仕事で使う方なら叩き込んでおいてください。
あと、モーターを扱う電気系の人もぜひとも覚えおいてほしいです。電流×電圧が電力(kW)になるわけですが、物理的な運動にしたときには「トルク x 回転数」と表せるというのも理解しておいたほうがよいと思うからです。というのも、意外と理解できていない人が多いのではないかと思うのです。
確かに、馬力(power)って意外と理解が難しく、力(Force)と混同しがちです。
さて、船くらいの規模だと馬力の単位は kW (キロワット)が一般的で、PS(馬力)も使います。1PS=0.7355kW です。
ちなみに、1馬力はどのくらいかというと、人間が瞬間的に出せる程度だそうです。1kWはさらに少し大きな馬力になるので、かなり力持ちな人なら出せるレベルでしょうか。
そして、馬力、出力、パワー(power)、言い方いろいろですがどれも同じ物理量です。馬力は、
「力(N)x速さ(m/s)」
と学校の物理で習うかと思いますが、実際の機械は回転運動するものが多いので最初に書いた
「トルク x 回転数」
で覚えたほうがよいと思います。トルクは軸をねじる力と考えればよいです。厳密には1mの”腕”から1N(ニュートン)の力をかけるのが1N・m。トルク(N・m)がいくら、というのは実はそれほど聞かなかったりもしますが、考え方が重要です。大きいトルクがかかるなら回転軸は太い設計になります。馬力が大きいのに、回転数が低い、ということは..トルクが大きい、だから軸があれだけの太さなのだ、という感覚的理解ができます。
この感覚的な理解が大事だと思っていて、これができると間違いにすぐ気づくし、頓珍漢なことも言わなくなります。
それと、前述しましたが混同しがちな力(N)と馬力(W, kW)の違いも、よく考えて理解して感覚的にもわかるようにして、区別できるようにしておくとよいと思います。(説明しろよって感じですが)
例えば護衛艦などには、合計出力5万馬力程度の(たいてい)2基のガスタービンエンジンが搭載されています。ガスタービンエンジンというのは高速回転します。この馬力を貨物船に搭載されているような大型舶用ディーゼルエンジンで出すなら、巨大なエンジンになります(護衛艦に載せたらはみ出すんじゃないかな)。貨物船に搭載されているのは、低速2ストロークディーゼルエンジンというくくりです。減速機なしでプロペラ直結で回っており、回転数は60~100回転とゆっくりで、トルクが大きいです。大きなトルク(力)を発生させるため軸も太いし、エンジン自体のガタイもデカいです。ガスタービンエンジンはトルクは小さいけれど、高速でブン回っている(1万回転以上)ので大きな馬力が出せるというわけです。
以上ご理解いただけましたでしょうか。
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