船の大きさと輸送効率 造船のおもしろ豆知識集#9
導入編はこちら↓
船は大きいほうがいいのか小さいほうがいいのか。今回は高校物理っぽい話になります。
船が進むときの抵抗について考えていきます。
抵抗の大部分(90%以上)は「粘性抵抗」というものです。水はさらさらのように見えて、実はわずかな粘り気があり、水と接触している船体の表面とのあいだに抵抗が発生しています。
次に大きい抵抗は「造波抵抗」という、船独特のもので、波ができてしまうことによる抵抗です。スピードが速い船ほど大きくなりますが、ここではわずかなものと考えます。大部分をしめる粘性抵抗は、船の浸水表面積(水面より下の水に浸かってる部分)に比例します。表面積なので、長さの2乗に比例します。つまり船の長さが2倍になったら抵抗はおよそ4倍になります。一方、載貨重量は体積なので長さの3乗比例になります。船の長さが2倍になったらおよそ8倍の重量を積めます。このことから、船が大きいほど積んでいる重量のわりに抵抗が少なくなります。つまり、小さい馬力で輸送することができます。ここでは、(抵抗の大きさ)=(進むのに必要な力の大きさ)と考えてください。
このようなことを「2乗3乗の法則」といったりします。
さて、大きくすればするほどいいかというと、当然制限がでてきます。
まず、コンテナ船などでは、強度を確保するためにも大きさの限界があると聞いたことがあります。
そして運用上のことで、入港できる港には喫水の制限や船の長さの制限があります。また、航路によって、パナマ運河などでは特に幅制限が大きな影響があったり、マラッカ海峡などの海峡では水深からくる喫水制限、橋の下を通るには高さ制限があります。大きな船ほど航路が限られます。
ということで、物理的に考えると、船は大きければ大きいほど輸送効率がいい、というとてもシンプルなことがいえます。しかし、実際は運用面等で制限があるということです。
以上、2乗3乗の法則をもとに船の輸送効率について考えてみました。
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