乱文1
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電車でおばあさんに席を譲ろうとしたら「私はもう座れないの」とのこと。足元を見てみるとおばあさんの膝から下は大きなキャタピラになっていて床にはオイルが垂れていた。おばあさんの悲しそうな顔を見て変な気遣いをしてしまったと反省すると同時に僕は「足がキャタピラなら電車に乗らなくても良くね?」などと思ってしまった。
平成最後の夏。平成最後の蝉はミンミンミンミンミ。
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僕のTwitterがバグっているのですがこれはきっと森へ向かえとの暗示で僕は虚ろな目で家を出ようかと思案しています。ポケットには携帯と取るに足らない思い出話の一つや二つ。向かう森には大きな猿人が暮らしている様なので彼等が好みそうな貢物をこしらえて道中仲間になると言う犬雉蟹ルンバ臼蜂等と共に何かと戦うのでしょうか。話は変わりますがルンバに嘘を吸い込ませると翌日には小さなルンバが誕生するようです。すごいすごいぞルンバ。
家電製品にも人権を。
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雨、傘を差す人は捨て犬を見て「濡れた犬」と思うが雨、街角の犬は行き交う人を見て「乾いた人間」と思うのだろうか。
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長い年月をかけて上等な毛糸をよれよれのセーターに編んでいくようなそんな話と鮫は強い。
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アパートの鍵を閉め忘れた事に気付いて慌てて帰ったのだが、いつもより重く感じる扉を開けるとそこには新たな文明が。人々は作物を育て、喜び、悲しみ、愛し合って、その生を存分に消費していった。やがて人は憎しみ争いを始める。幸福の為に生産していた過去は遠く、武器は煙とオイルの匂いを放った。文明は荒廃し、部屋に残る物は何一つ無かった。かつて六畳に押し込められていた僕の本やアルバム、その他何もかも全て消えてしまったが、彼らが無くしたモノに比べたらどうでもいい事のように思えた。
このような場合火災保険又は災害保険は適用されるのでしょうか。
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もうすぐ通勤ラッシュ、人混みに紛れている僕。
遠くに見える公衆便所の脇で一人、楽しそうにダンスするおじさん。
駅に吸い込まれる人々を横目に、お気に入りの音楽を思う存分に聴き踊ることができたら、それはそれは楽しいことだろう。おじさんは自分の意思で踊っている。僕は今踊れているのだろうか。
徐々に近づいて気付く。おじさんは音楽を聞いていなかった。ただすれ違う僕の目だけをずっと見ていた。あとおじさんではなくおばさんだったし、一度瞬きをしたら消えてしまった。おじさんが立っていた場所には草木が芽吹き、微かに発光していたようにも感じた。
それから通勤中のサラリーマンは全員おじさんのように踊り出し、僕が瞬きをすると消えてしまった。
そんなおじさん(おばさん)がいたのですが、僕はどこに通勤すれば良いかわかりますか?
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