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壮大なスケールと緻密な細部に驚嘆する〜『バベルの塔』展

昔、人々は天まで届く塔を建設しようとした。しかしその野心は神の怒りを買い、神は互いの言葉を理解できないようにバラバラに乱してしまう。その結果、人々は散っていき塔はついに完成しなかった。──これが旧約聖書に記されたバベルの塔をめぐる有名な挿話です。

同じ言葉を話す者どうしでも意思の疎通がままならなくなった現代ニッポンで、ピーテル・ブリューゲルの〈バベルの塔〉と対面することは優れた絵画を観ることの感銘とともに、何やら教訓的という以上の感慨をもたらしてくれるような気がしました。
聖書にあってはバベルの塔は完成しなかったかもしれませんが、この絵画からはむしろ人々が無心に協働するすがたを感じとることも可能ではないでしょうか。

今回の展覧会では新しい試みとして、東京藝術大学の特別協力により芸術と科学技術を融合させ、原寸を約300%拡大したブリューゲル「バベルの塔」の複製画を展示しているのも一興。

ブリューゲルに加えて、奇想の画家として知られるヒエロニムス・ボスの油彩画が2点初来日しているのも見ものです。〈放浪者(行商人)〉〈聖クリストファロス〉ともに寓意にみちたおもしろい絵。いくら眺めていても見飽きることはありません。

このほか美しい色彩と細部の入念な描写が印象的な油彩画、ボスの怪物モチーフを描いた版画作品、多くは作者不詳ながら木彫の粋を凝らした彫刻作品などなど、16世紀ネーデルラント美術の精華の一端を堪能することができました。

*『ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル 「バベルの塔」展』
会場:国立国際美術館
会期:7月18日〜10月15日
主催:国立国際美術館、朝日新聞社、朝日放送、BS朝日

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