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ヒトの手が及ばない大自然のすがた〜『最後の辺境』
◆水越武著『最後の辺境 ──極北の森林、アフリカの氷河』
出版社:中央公論新社
発売時期:2017年7月
山岳氷河の聖地ともいえるカラコルムの大氷河。黄河源流の幻の山アムネマチン。アラスカ・ブルックス山脈の森林限界。世界最大の水量を誇る南米イグアスの滝。アフリカの赤道直下にある高山氷河ルウェンゾリ。北アメリカ西部沿岸に広がる巨木の森。地上最後の秘境といわれるコンゴ川流域の熱帯雨林。数多くの固有種が生息する世界最古の湖バイカル湖……。
人間の手が及ばない辺境の大自然の様相をレンズで捉え続けた半世紀。本書は自然写真でその名を知られる水越武の写真集です。1979年から2003年までの作品を収めたカラー版中公新書の一冊で、手軽に壮大なスケールの美しい写真をたのしめます。撮影の苦労話をまじえた随想的な文章も地球の大自然を愛でる写真家の知的好奇心や冒険心が感じられて味わい深い。
もっとも昨今は気候変動や環境汚染によって自然の「最後の砦」にも悪影響が及んでいることに水越は危機感を隠しません。先祖から受け継いだ豊かな地球のすがたをできるだけ毀損せずに次の世代に伝えていくためには、現代人の営みそのものにも修正を加えていく必要があるでしょう。そんなことも考えさせられる写真集です。