モチベーションを高める理論 Part 4
さて、モチベーションを高める理論も半分を切りました。楽しみながら、読んで頂けているでしょうか。
今回は、達成目標理論のお話です!
達成目標理論とは,人は達成場面において自己の有能さを示そうとし,そのため達成目標を設定し, その目標が行動や感情に影響するという考え方である(Nicholls,1984; Dweck,1986; Ames,1992) 。
達成目標は,自我目標と課題目標の 2つに分けられます。自我目標とは、他者との比較において、優位に立つことを重視する目標です。また、課題目標とは、能力を高める・熟達することを重視する目標のことです。
例として、「他者よりも良い成績を取る」「試合で勝つ」などは自我目標に当たり、「技術を高める」「新しいスキルを獲得する」などは課題目標になります。力を示すという点では共通しますが、他者と比較し能力を示すことを重視するか、自分の能力を向上することを重視するかという違いがあります。
Dweak (1986) によると、目標と行動の関係は人の能力に対する考え方(能力観)によって目標の選ばれ方が異なると指摘しています。
上の図の通り、能力が学習しても変わらないというような固定的理論観をもつ人は、能力が低いと評価されることを避け、能力が高いと評価されることを目標とする自我目標が選ばれます。
また、能力は努力で伸ばせるという拡大理論観をもつ人は、自分の能力をどのように向上させるかということを目標とする課題目標が選ばれます。
~自我目標~
自我目標を持っている人で自分の能力への自信が高い場合は,挑戦を求め努力を続ける行動パターン(熟達志向型)を示しやすくなる。
反対に,自分の能力への自信が低い場合は,努力するほど自分の無能さを示すことになるので挑戦を避けたりすぐ諦める行動パターン(無力感型)を示しやすくなると考えられている。
~課題目標~
一方,課題目標を持っている人は,他者との比較によって動機づけられているわけではないため,自分の能力への自信の高低に関わらず課題に積極的に挑戦し努力を続ける行動パターン(熟達志向型)を示しやすくなると報告されている。
(上淵・川瀬,1995; 日本スポーツ心理学会,2008; 杉山,2012)
スポーツ場面において、これらの目標の立て方によって選手の動機づけにどのような影響を及ぼすのかという研究が実証されています。
藤田・末吉(2010)が、シャトルランを運動課題として行った研究では、シャトルランのパフォーマンスは目標志向性の種類に関係が見られなかったものの、自我目標を持つ者は、課題目標を持つ者に比べて努力意図が低く、諦め意図が高いこと、さらに自我目標持ちで自己効力感が低い場合には、諦め意図が特に高かったと報告されています。
つまり、今日の記事を読んで頂いてわかると思いますが、要は他人と比較せず、自分の能力を高めることを意識することが臨まれます。
では、自我目標志向を課題目標志向に変える方法は何でしょうか?
他人比較してしまう人の心理的特徴として、
・周囲からの評価が気になる
・勝っているポイントを見つけ、優越感に浸りたい
・何事も人より秀でてないと気が済まない
・褒めてほしい、認めてほしいという承認欲求
現代の社会や、学校教育では、成績や点数など数値化されるため特に順位という形で比べられてしまいます。小さな頃から、他人との競争、比較が擦り込まれています。実際、順位を上げることがモチベーションに繋がることもあります。
これらの言葉から共通していることは、自分への自信のなさです。だからこそ、ポジティブ思考になる必要性があります。
ポジティブ思考になる方法については、また後日の投稿にて失礼いたします。
参考文献
・Dweck, C. S.(1986)Motivational processes affecting learning. American Psychologist 41: 1040-1049
・藤田勉・末吉靖宏(2010)シャトルランにおける目標志向性と自己効力感の影響. 鹿児島大学教育学部研究紀要(教育科学)61: 93-102.
・Nicholls, J. G.(1984)Achievement motivation: Conception of ability, subjective experience, task choice, and performance. Psychological Review 91: 328-346.
・上淵寿・川瀬良美(1995)目標理論. 宮本美沙子・奈須正裕(編).達成動機の理論と展開-続・達成動機の心理学-.金子書房:187-215.