生きること、学ぶこと
教師の役割とは何か?
〜「たつじんテスト」とICEモデルの共通点〜
「たつじんテスト」とICEモデルには共通点があった。
どちらも、広島県の教育長(当時)の下崎邦明先生に評価されて
勢いがついた。「広島県の教育長・下崎邦明さんが、教育のことについてほとんど何も書かれていない「レキシコンの構築ー子どもはどのように語と概念を学んでいくのか」になぜか興味を持ってくれたのです。」(今井むつみ)
教師の役割とは
岩波の図書12号、今井むつみ「学ぶ力と「たつじんテスト」を読む。
これまでも今井の言語学視点からのスキーマについてnoteに書いてきた。
福山市教育委員会との連携は知っていたが、下崎教育長の名前を見て、なるほどと思う。追って理由を述べる。
「生きた知識」を鍛えるとは
スキーマ(schema)から学ぶ英語とは
今井は、これまでの学力テストや標準テストを疑っている。
「学力は、単元テストや標準学力テストのスコアで評価できるものではない。なぜか? 暗記しただけのものは使えないから。大切なのは、知識を使ってさらに新たな知識を作るというプロセスである。」(今井)
学校教育は演繹的方向で教えるが、演繹的方法では学びはできないという。
幼児の言語習得は、スキーマを用いてことばの意味を時間をかけて、もがきながら一人で習得していく。まさに帰納的方向である。新しい知識の習得は、このようにして行われる。
当時、下崎は、独自の教育改革を進めていて、ICEモデルには、広島の教育改革で実施しようと考えていたことが、整理されていると考えた。ICEを使うと教師が楽しく教えることができて、生徒が楽しく学ぶことができると考える。
学びは教わるものではなく、本人が見つけるものである。本来テストなどで他者と比較するものではない。本当の学びとは、学んだことを発展させて、本人が納得できることであり、他人に評価されるものではない。
ICEモデルは、社会のあらゆるものに関わる人間の能力について「人間の可能性」を表すものです。広島の柞磨昭孝先生は、次のように説明する。「自分を相対化し、自分の置かれた状況に置いて課題を発見し、対応していく挑戦心と実行力を育てる。学ぶものが、学びを通して他者と作用しあい、価値を作り出し、共有するということです。」
達人とは、これと決めた道で、コツコツと学び続け、達人の域に及んでいる人である。「たくさん知識を入れてもダメで、要素知識を磨いていくと同時に、要素同士を関連づけていき、統合的な表象を創っていく。密につながると、新しい知識を創造する表象ができてくる。(今井)
ICEモデルでの要はCのConnections(つながり)です。新しい知識をそのまま記憶しても自分のものにはなりません。それらを自分の経験や関心につなげることで本当の知識になっていきます。新しい価値創出ができる。つまり自分のことばや知識になって、パブリッシュできるようになります。
「たつじんテスト」の目的は、教師が生徒が間違ったスキーマを持っていることをアブダクションによって理解してあげることにある。したがって、テストで評価することなど意味がないのである。ICEモデルは教師がテストで評価することをしません。生徒が学ぶのですから、生徒自らが評価します。その評価を教師も共有していきます。
かたやテスト、かたや学びの方法ですが、学ぶことについて同じ文脈を持っていることがわかります。