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生きること、学ぶこと


安倍晋三の不正義とは



〜日本の経済活力をとことん奪った異次元の金融緩和と財政バラマキの負の遺産、そして-----〜



 アベノミクスの名付け親である原真人の解説はわかりやすい。「アベノミクスは何を殺したか」を読む。
専門的な経済の知識がなくても理解できる。

 安倍の政治的歪みは、旧統一教会との選挙協力を始め、今回の衆議院選挙の最大の争点である裏金問題まで、多くが未解決のままである。強権的ポピュリズム、国民分断の政策、言論統制のメディアへの対応など堂々と不正義を繰り返してきた。

 それどころか、経済の再生と目した「デフレ脱却」の金融政策が実は経済の根本的活力を奪ってきたという指摘が、原や白川たちの指摘である。

 2012年に、白川は安倍と対立する。しかし、政府との対立が表にでれば、市場の混乱を招く。何らかの共同声明は仕方ない。ただし、譲れないことを全て書き込む。デフレ脱却、物価上昇2%.2年以内の達成を安倍は求めるが、白川は期限の設定を拒んだ。
その理由は際限ない国債の買い入れに組み込まれる危険があるため、と退任後に説明した。

 白川方明の会話の中で、安倍が自らの政治を傷つけないために、日銀を利用した実態が明らかにされている。白川は「国民のための物価安定」という中央銀行の使命を守るために、安倍と戦ったことが、総裁を辞めた後の、英国貴族院との対話や回顧録で明らかにされる。

英国貴族院議員との会話では民主主義の危機を思わせる発言もしている。


2018年の英国貴族院議員からのインタビュー

 元イングランド銀総裁マーヴィン・キングから
「日銀が金融政策の自由を奪われ、政府に隷属していないか」と問われる。
白川は、Yesの代わりに「財政と金融政策に頼るのではなく、「日本の経済の根本的な課題」を解決することに注力しなければならない」、と答える。
人口減少、超高齢化、財政の悪化、社会保険制度などである。
白川の信念がある。日銀の誠実さに対して国民の信頼があることが一番大切なことである。


2023年、国際通貨基金(IMF)に「Time for Change」の論考

 世界が金融政策を正当化していることを危惧して、金融政策の再考を促すためである。3つのことを述べる。

1)「デフレの危険性」や「ゼロ金利制約」というテーマにフォーカスすべきかどうかの疑問である。

利下げの余地が拡大しても、金融の不均衡が債権によって煽られた資産バブルや金融危機として顕在化した場合、何の役にも立たない。中央銀行は、インフレや需給ギャップというマクロ経済だけを見るのではなく、金融機関や金融市場で何が起こっているのか注意を払うことが必要である。

2)日本はなぜ長期に渡り金融緩和を続けざるを得なかったのか?

日本の停滞は、急激な高齢化と人口減少などの構造的問題であるにも関わらず、一時的な不況であるという判断(大いなる誤解)。10年も金融緩和を続けたので、企業等の生産性の活力を無くしてしまった。投資もなくなった。金融緩和や量的拡大は企業にとっての本当の需要ではなく、あくまでも将来の「需要の前借り」である。長期間続き慢性化すると、効果は薄れ、供給も制限されて本来の生産活力はなくなってくる。

3)国ごとにインフレの動きや金融政策が異なるのは当然である。

日本は、長期雇用制度のため、バーターとして安い賃金と低い失業率で、低インフレでやってきた。そもそも安倍が「デフレ脱却」と言ったが、日本はデフレではなかった。

安倍がやってきたことは、禁じられている「財政ファイナンス」である。
「中央銀行による政府への信用供与」をしてはならない、と金融政策の独立性に謳われていることを破った。(米国も国債買い入れをしているが10%ほどで、かつ保有資産が多い。日銀は世界の異常である)
その結果、安倍が作った負の遺産は膨大である。
国際500兆円、ETF(上場投資信託)35兆円(2024年時点で70兆円を超える)を日銀が買い取った。黒田から植田和男に引き継がれた負の遺産である。


悲観的なシナリオ

 繰り返す。安倍がやってきたことは、世界でやってはならないという「財政ファイナンス」である。
「中央銀行による政府への信用供与」をしてはならない、と金融政策の独立性に謳われている。(米国も国債買い入れをしているが10%ほどで、かつ保有資産が多い。日銀は世界の異常である。

日銀はETFも長期国債も大量に買ったので、財務体質は最悪である。中央銀行は通貨の信用を守ることが一番大切であり、普通は、中央銀行が金融政策で危険な株を買うことはない。

日銀はすでに中央銀行の体を成していない。残る道は増税かハイパーインフレしかない。政府の借金をインフレで踏み倒すのである。
日銀が財政ファイナンスをやったら、ハイパーインフレになってしまうことは歴史が証明している。日銀はルビコン川を渡ってしまった。ここまで財政赤字拡大を許してしまった国民は苦しむしかないのか。もし、増税するならば、50%の消費税にしないとだめである。
安倍のしたことは後のことを何も考えていない。「あとは野となれ山となれ」である。(藤巻 健史)
 財政健全化をしないと日本は潰れることを、石宏光(元政府税制会長)の意思を嗣ぐ矢野康治は自身の論文で安倍に示すが、安倍は聞かない。
(2024年現在、国の借金は1311兆円)


アベノミクスの負の遺産

 金融緩和政策は菅 、岸田も継続する。
コロナの収束、ウクライナ戦争で物価高になり、デフレ脱却という。円安により、大企業の収益は上がり、株価は上がったが、景気感は戻らない。
政治家は、株高、賃上げと言っているが、中小企業は見捨てられている。
日本の企業の99.7%は中小企業であり、70%の雇用をかかえている。その30%が業績不振である。原材料、電気代が上がっている。コストは3−5割上がっている。価格転嫁ができない。賃金上昇を転嫁できていないのが60%ある。

 実質賃金は26ヶ月連続で前年同月より減る。円安で儲けた大企業以外は。物価上昇を超える賃金アップはできないのである。労働分配率は大企業35%.中小企業66%である。

 円安で大企業は潤い、中小企業は苦しむ。倒産が11年ぶりに1万件を超す可能性がある。安部政権が去り4年、まだアベノミクスの呪縛にとらわれている。「「デフレ脱却」という間違いが、まだ自民党で使われている。驚いたことに、石破も金融緩和と財政ばら撒きを正当化している。デフレ脱却とは物価を上げること。今の物価高でさらに物価を上げるとは?

(原真人 朝日多事奏論 デフレ脱却宣言、イシバノミクスと呼ばせるな)


どう動くか

 今、世界の市場はものすごい金あまりになっている。米FRBも金融引き締めが遅れてしまった。1985年当時の日本のバブルと同じような状況にある。米国の株価は史上最高値で全ての投資家が儲かっている。日本では円安が進んでいる。
 植田は2024年に17年ぶりに利上げをして、マイナス金利を解消した。物価の上昇と賃金の上昇が見えてきたためとしているが、輸入資源(エネルギーや穀物)等の高騰による外部要因であり、かつ賃金上昇も人手不足によるもので一部である。決して好循環が予定されているのではない。
さらに財政に与える影響について、中長期の金利が上昇してくれば、利払い費の負担の増加が懸念される。財政の自由度が失われるほか、日本国債の格下げなどのリスクも出てくる。


新しい資本主義を考える

 安倍は、3本の矢は、すでに終わってしまっている近代を終わっていないと勘違いしている人たちが作った支離滅裂の幻影である、水野和夫(元モルガンスタンレー、内閣官房内閣審議官)の考えである。

 さらにいえば、アベノミクスの本質は資本家のための成長戦略であり、国民のためではない。 成長が解決するのは資本家だけ。成長で人々は豊かになることがなくなっている。 アベノミクスはROEを5%から8%は引き上げよという、資本の成長戦略である。
安倍は成長するのは、資本家であることを隠していた。

 実際この2−30年では資本は伸びているが、賃金は下がっている。
世界のビリオネアは1600兆円も持っている。個人の資産として意味をなさなくなっているほど膨らんでいる。一方資産のない人の自由が奪われている。このままでは、明日のことを考えなくて良い社会にはならない。
いまこそ、社会を作り直す必要がある。無理に成長を求めない社会が可能なはずである。

資本主義の蒐集には際限がない。

 利潤を極大化しない交易をやる。日本にはもはや資本主義は必要ない。資本主義というのは利潤の極大化のことであると考えると、必要なものだけを作る企業で良い。ROEを8%も15%もなくてもいい。資本主義の定義が資本の自己増殖だと分かればやめられる。株式会社はもう上場しなくていい。今は、内部留保があり、調達が不要である。90年代後半、資本余剰になる。減価償却を賄う分だけあればいい。ROE2%で十分である。

これは一つの考えである。


ベクトルを変えるためのエネルギー

 小野善康(長期不況理論の提唱「資本主義の方程式」)は、アベノミクスは、無駄に貨幣を増やして、収束のつかないところまでいった。途中で失敗とわかってもやめなかった。どの政策も需要が増えないのに、労働を増やし、供給力を増やす政策である。一人あたりの生産性は減るだけであった。安倍には金をばら撒くことしか頭にない。全く効果がないのにまだ通用すると思ってやって、案の定失敗した。

 日本のように経済の成熟した国は、新しい需要を考えることが国力である。文化、環境・福祉など。生産性の向上による供給力ではない。
需要の力で国力があるのは欧州先進国である。日本は生産力が力を持ちすぎている。

政治はそれをわかっていない。

 人口減少の今日、巨大なインフラの超電導リニア鉄道ではなく、まだまだ足りない、医療、福祉、環境、防災などの分野や音楽、美術、スポーツなど文化の需要開発への投資をもっとすべきである。

 「安倍が破壊したものは、財政や金融政策にとどまらない。政治から節度と責任感を追いやり、官僚組織や中央銀行の矜持を踏みにじり、日本の国家システムの根幹をかなり壊してしまった。そう考えると、アベノミクスを単に経済政策としてだけとえらえていては、真に私たちが抱えた問題を見誤ることになる。

要は、アベノミクスとは国家の借金の大膨張も辞さない未来に対する無責任さ、批判的なメディアを排除し、記者会見で説明責任を果たそうともしない民主主義への不誠実さ、政権全体の強権的な空気---すべてを包含した言葉としてある。」(原)





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