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九十歳。なにがめでたい
発売された2016年。
平積みされていたのを迷いなく買ったのを覚えている。
あれから約5年。
積読として本棚をあたためていたこの1冊をついに読み終わった。
90歳の方の目にうつる社会は、どんな塩梅だろう、そんな気持ちで表紙をめくった。
特別なことじゃない。
共感がそこに満ちていた。
筋の通った物言いに、安心感がある。
多様性を認めるふりして責任逃れな書き手の文章はもう、たくさん。そんな鬱々とした気持ちを吹き飛ばしてくれる。
足元がぐらぐら揺れているような不安にめまいがしたら、手に取って欲しい。
人間はそんなに高尚なものなんかじゃないって。
自分の都合を繋ぎ合わせて、群れをなして社会を作っているの。
誰かにとっての好都合は、誰かにとっての不都合で。
矛盾だらけ。
愛しているのに苦しめることもあって。
どうして?
そんなこと考えることも許されないくらい、慌ただしく生活が過ぎていく。
それが生きること。
そんな、人間の素朴な毎日を思い出せたエッセイ。
ロン204