拒絶されて,なお一度
可換環論botのマシュマロを実質的に閉じて以降,匿名メッセージサービスとしてOFUSEとmondを利用しています.勢いあまって2つも登録してしまったのですが,使い分けの方法が全く思い浮かんでおりません.
さて,今日はmondで頂いたメッセージにお返事をしたいと思います.切実なご質問だったので,ちょっと時間がかかってしまいました.ご質問はこちらです.
まず,大学院入試お疲れさまでした.「まだ終わったわけじゃないです」ももっともですが,ぼくは人生において「区切りをつける」をわりと重視しています.良いことも悪いことも,起きたことは過ぎたこととして整理していく.同じことがもう一度あるならば,それはまた新しい取り組みとして位置付ける.そんな風に生きています.
そして,大変でしたね.入試での不合格のは,起きうることですが,わが身に起きれば痛いことです.なかなか人間,あからさまに拒絶されて,すんなり受け入れられるものではありません.試験というのはちょっと独特の雰囲気ですから,心の持ちようを御するのも大事な技術ですが,そのための方法論は「自信をつける」くらいしか思いつきません.
いけませんね,まったく頼りになりません.
とりあえず,ぼくなら
ご質問のメインは「モチベーションの保ち方」のようですが,まずは学びの内容について私見を述べます.
ぼくなら少なくとも年明けまでは,合格していた場合と同じように学びを進めます.卒業研究に平行して,大学院で師事したい先生に連絡を取り,進学の前に読んでおくべき文献を聞いて,それを読みます.
この理由は単純で,2次募集の合格を待っていたら遅いからです.今の修士課程は忙しいですから,分野によっては入学前にかなりの技術を身に着けておく必要があります.2次募集を受けて進学を希望するなら,後回しにする理由がありません.
院試自体の対策は,そうですね,年明けの1か月ちょっとくらいでしょうか.これはぼく自身の経験によるものなので,志望先などの環境次第では甘いと言われるかもしれません.不安に思うなら少し伸ばすしかないでしょう.
モチベーションは保つものか?
正直なところ,この「モチベーションを保つ」ということを今のぼくはあまり重視していません.ぼくにとって数学はなんだかんだ言っても趣味でしかなく,生活に支障が出そうなら,モチベーションの有無に拘わらず縮小せざるを得ないものだからです.
一方で,少し厳しい言い方をすれば,大学院に進もうという学生さんがモチベーションに左右されるようでは困らないか? とも思います.
未だに忘れられないのですが,ぼくが受験生だった頃の大学院の進学案内に
「修士2年間で4000時間勉強すれば,まともな修士論文が書けるでしょう」
と書いていた先生がいました.初めて見たときは4000という数字の大きさに驚いたものですが,しかしこれ,決して難しい数字ではありません.
計算してみましょう.修士課程2年間はざっと100週です.1週当たり40時間,普通の勤め人なら1週間の勤務時間です.平日5日,1日8時間として40時間,土日は計算に入っていません.大学院生として専門家になる修業ですから,就職した同輩と同じくらいか,さらに多くの時間を割くべきだという主張も頷けます.
そして,ここがポイント’なのですが,ここで挙げた「平日8時間」とはモチベーションの有無に左右される量ではないのです.気分が乗ろうと乗るまいと,それだけは当然やるべきものなのです.社会に出て「気分が乗らないのでやれません」は済まないのです.そんな義務を大学院生が負っているかは考え方次第ですが,20代半ばに差し掛かる人間がひとつの事柄にそのくらいの時間を割くべきというのは,さほど無理を言っているとも思いません.
この半年をどう過ごすか
そんなわけで,具体的にこの半年をどう過ごすかですが,ぼくは勉強時間を目いっぱいとることをお勧めします.2次募集までの半年間,卒業研究も含め,目いっぱい数学に打ち込んでみてください.何をどれだけやるかは日によって変えてもいいですが,1日8時間以上,手を変え品を変え題材を変え,数学に触れ続けてみるのはどうでしょうか.
量より質を求める方法もあります.ありますが,一人でやるのはかなり難しい.質の良いもの(だけ)を適量取ればよい,というのは質の良いものを判断できる人に限られます.量を増やす,すると質の良い学びもおのずから増えていくはずです.量が質を作るのです.
そして,量をこなした事実は自信につながります.自信は自分の成し遂げたことについてくるものです.数学は難しく,なかなか進まないときもあります.解けない問題も多々あるでしょう.一番単純ながら自信になりやすいのは勉強時間だったりするのです.
最後はちょっと強引にまとめましたが,健闘を祈っています.頑張ってください.
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