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ゼータ関数の特殊値~超越数探求の最前線~

本記事は書籍版「笑わない数学2」のテーマ1『超越数』の執筆中に作成したノートのうち,紙面の都合によって削除したものです.書籍には本編に加え,より興味深いノートもたくさん書きましたので(このノートが入りきらなかったくらい!),是非お求めください!

指数関数$${e^x}$$や対数関数$${\log x}$$はたくさんの超越数を生み出すことがわかりました。そういう関数は、他にもあるのでしょうか?

『笑わない数学』第1巻「素数」で、素数の秘密を握る重要な関数としてリーマンのゼータ関数が登場しました。

$$
\zeta(s) = \frac{2^s}{2^s-1} \times \frac{3^s}{3^s-1} \times \frac{5^s}{5^s-1} \times \frac{7^s}{7^s-1} \times \cdots \\
= \frac{1}{1^s} + \frac{1}{2^s} + \frac{1}{3^s} + \frac{1}{4^s} + \frac{1}{5^s} + \frac{1}{6^s} + \cdots
$$

ゼータ関数については、オイラーが巧みな方法で

$$
\zeta(2) = \frac{1}{1^2} + \frac{1}{2^2} + \frac{1}{3^2} + \frac{1}{4^2} + \cdots = \frac{\pi^2}{6}
$$

と計算したことは、第1巻でも紹介しました(バーゼル問題)。

 実は、オイラーの計算はここにとどまりません。$${s = 2}$$のみならず、すべての偶数$${s = 2k}$$で

$${\zeta(2k) = \pi^{2k} \times }$$有理数

と表せることを証明したのです。$${\pi}$$は超越数ですから、

偶数$${s = 2k}$$に対し、$${\zeta(2k)}$$ は超越数である

ですね。ですが、超越数としてはどれも「$${\pi}$$の仲間」と言えるでしょう。

 偶数での値がわかったら、次に気になるのは奇数$${s = 2k+1}$$での値$${\zeta (2k+1)}$$です。ところが、奇数での値については、わかっている事柄は激減します。$${\zeta(3)}$$は幸運にも無理数だと証明されましたが、超越数かはわかりません。$${5}$$以上の奇数$${s = 2k+1}$$の中で、$${\zeta (2k+1)}$$が無理数だと確定したものもありません。奇数での値$${\zeta(2k+1)}$$はどれも超越数、しかも(偶数の場合と異なり)どの2つもまったく似ていない超越数だと予想されているにもかかわらず、有理数か否かすらまだわかっていないのです。ゼータ関数の値については、現在でもさまざまな方向から研究が進められています。

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