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4日で文学フリマに出した本の行方②

本の制作は余裕をもって行われるはずだった。

年末年始を明日やろうでダラつき倒した先は、
「あれ、来月もう文学フリマだっけ」という冷や汗展開だった。身についたのは脂肪だけで、何ひとつ形になっていない。

私はなぜか詩集、絵本、エッセイの3タイプをつくってみて、何が自分にしっくりくるか試してみる計画をたててしまっていた。あと1ヶ月とちょっとで出来るものなのだろうか。本ってまずサイズとかどう設定すりゃいいんだろ...。

やばいやばいと、そこから詩をまとめ、挿絵をつけて、印刷所のサイトを舐めるように見て、なんとか完成させたときには2月上旬になっていた。文学フリマは2月26日、しかし印刷所の締切はもちろん、それより早い。

ひとまず、ストーリーが決まりきらないまま、放置していた絵本に取りかかるが、展開がシンプルがゆえに難しく、何ひとつまとまらない。唸りながらもなんとか描き続け1週間が経過し、線画が完成した。あとは全体をカラーで塗れば終わり、までいきついた。

なぜか私は「カラーならデジタルだし1日で終わるだろ」と思ってしまっていた。締切日前日、仕事終わりの20時から塗り出したのだが、まず登場するクマのキャラクターの毛の色を決めるのに、45分くらいかかった。もうこの時点で怪しい。

そこから1、2ページ塗ったところで、なんかヤバいなというムードは加速していった。0時をまわって、まだ4分の1も塗れていないと気づいたときには、明日仕事に行けるのか非常に不安になった。

もう割り切って塗っていくしかない。何色にしようかな〜とか考える瞬間は微塵も許されない。目が合った対象物に0.1秒で色を塗るしか道はないのだ。そこから登場する鍋や木、ハンバーグたち...薬物中毒患者なのか、前衛的なアーティスティックなのか分からない色を重ねながらも、クマに45分使ったせいで、もう後戻りはできない。4時までは自分を励ませていたが、時刻は6時半となり、決死の原稿は入稿された。

ぼやける視界で、印刷所への送信メールを確認していると、顎に違和感があった。手で触ってみると、ボコっと触ったことのないサイズの吹出物が爆誕していた。呑気だった0時まではなかったのに。『顎のニキビ 意味』で検索する余力もなく、ベッドに倒れ込み、30分後には職場に向かうために、目覚めなければならないのであった。

制作期間が4日しか残されていない、エッセイという最後の砦を残しながら...。  つづく...


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