[西洋の古い物語]「違う葉を欲しがった木」
こんにちは。
いつもお読み下さり、ありがとうございます。
今日は、今つけているのとは違う葉を欲しがった小さな木のお話です。
ご一緒にお読みくださいましたら幸いです。
画像は、今年初めて見つけたヒガンバナです。
やっと秋がきましたね。
「違う葉を欲しがった木」
森の中に小さな木がありました。お天気の良いときも嵐のときもその木はそこに立っておりました。その木は上から下まで、ふつうの形の葉ではなく、針のような葉で覆われておりました。針のような葉は鋭くてチクチクするものですから、小さな木は独り言を言いました。
「仲間の木はみんな、美しい緑の葉を持っているのに、僕には鋭い針みたいな葉しかない。誰も僕に触れてくれやしない。もし願いがかなうなら、純金の葉をください、ってお願いするんだけど。」
夜が来て、小さな木は眠りにつきました。するとどうでしょう!朝早く目覚めた木は、自分が輝く黄金の葉っぱで覆われているのに気付きました。
「ああ、ああ!」と小さな木は言いました。「僕はなんて立派なんだろう!森のどの木だって黄金をまとってはいないぞ。」
ところが、晩になりますと、大きな袋を持ち、長い髭をたくわえた一人の行商人が
やってきました。彼は黄金の葉の輝きを目にすると、葉を全部摘み取り、小さな木が裸で寒がっているのもお構いなく急いで行ってしまいました。
「ああ!ああ!」と小さな木は悲しくて泣き叫びました。「僕の黄金の葉が全部なくなってしまった!他の木はあんなに美しい葉をもっているのに。なんて恥ずかしいことだろう。もう一つ願いがかなうなら、ガラスの葉が欲しいんだけど。」
それから小さな木は眠りにおち、朝早く目覚めると、キラキラ光り輝くガラスの葉で自分が覆われているのに気付きました。
「これで」と小さな木は言いました。「僕は幸せだ。森中のどの木だって僕みたいに輝いてはいないぞ。」
ところが、猛烈な嵐がやってきて森の中をかけめぐりました。嵐の風がガラスに打ちつけ、あっと言う間に輝く葉は全て砕けて地面に散りました。
「僕の葉が、僕のガラスの葉が!」小さな木は嘆きました。「壊れて落ちて埃にまみれてしまった。他の木はみんなちゃんと美しい葉を身にまとっているのに。ああ!もう一つ願いがかなうなら、緑の葉がいいな。」
小さな木はまた眠りました。朝になると木はみずみずしい緑の葉に覆われておりました。木は楽しげに笑いながら言いました。「もう恥ずかしい思いをしなくていいんだ。僕も森のみんなと同じ姿だもの。」
ところが、そこへお母さん山羊がやってきました。自分と幼い子供たちのための下草や野草を探していたのでした。お母さん山羊は新鮮な新しい葉を見ると、かじりにかじって全部食べてしまい、茎や柔らかな新芽まで食べ尽くしてしまいましたので、小さな木は丸裸になりました。
「ああ!」と小さな木は苦悩して叫びました。「もう葉っぱなんかいらない。黄金のもガラスのも、緑や赤や黄色のも!もしもう一度元の針みたいな葉を持つことさえできるなら、もう二度と文句は言わないのに。」
悲しみでいっぱいになって小さな木は眠りにおちました。でも、朝日の中で自分を見てみると、木は大笑いしました。他の木たちも皆笑いましたが、小さな木は気にしませんでした。なぜ木たちは笑ったのでしょうか。それは、夜の間に小さな木の針のような葉がすっかり元通りに戻ったからでした!
あなたもご自分の目でご覧になれますよ。森へ行って見ていらっしゃいな。
でも、あの小さな木に触ってはいけませんよ。
どうして駄目なのかって?
だって、チクチクしますからね。
「違う葉を欲しがった木」はこれでお終いです。
黄金やガラスの葉を望んだ小さな木は、ちょっと見栄っ張りでしたね。でも、本当は、仲間と同じ緑の葉が羨ましかったのでしょう。鋭く刺す針のような葉ですと、小鳥が羽を休めたり子供たちが柔らかい手で撫でたりすることもなく、小さな木は寂しかったのだと思います。
でも、何事にも一長一短があるもので、針のような葉にも良い点がありましたね。自分に与えられたものを不満に思い、「○○だったらいいのにな」とつい思ってしまう私にとって、学びの多いお話でした。
最後までお読み下さり、ありがとうございました。
このお話の原文は以下の物語集に収録されています。
https://www.gutenberg.org/cache/epub/359/pg359-images.html#link2H_4_0002
次回をどうぞお楽しみに。
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