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[西洋の古い物語]「麦の穂」

こんにちは。
いつもお読みくださりありがとうございます。
今回は、グリム童話より、実りの秋にぴったりなお話です。
ご一緒にお読みくださいましたら幸いです。
※おいしそうなパンの画像は、フォトギャラリーからお借りしました。ありがとうございます。

「麦の穂」
 
ドイツのおばあさんが話してくれたことですが、昔々、大昔には、天使たちが地上を歩き回ることもよくあったそうで、大地は今よりもずっと実り豊かだったのです。

その頃には、麦の稈(かん=茎に当たる部分)は50や60ではなく、500の4倍、すなわち2,000本もの穂をつけていました。当時、麦の穂は、稈の一番下から天辺まで出ていたのです。しかし、地上の人間はこの恵みが神様の下されたものであることを忘れ、怠惰で自分勝手になってしまいました。
 
ある日のこと、一人の女の人が麦畑を通っておりましたところ、一緒に連れていた彼女の幼い子供がこけて水たまりに落ち、スモック(上下続きの子供服)を汚してしまったのです。お母さんは麦穂をひとつかみもぎ取り、それで子供の洋服の泥をきれいに落としました。
 
丁度その時、天使が通りかかり、彼女を見たのです。
天使は怒って言いました。
「無駄遣いの女め、今後もう麦の稈は穂をつけぬであろう。汝ら死すべき者は天の恵みに価しない!」
 
畑では何人かのお百姓が麦を収穫していましたが、これを聞くと彼らは跪いて祈りを捧げ、麦をそのままにしておいてくれるよう天使に懇願しました。彼らは、自分たちのためだけでなく、小鳥たちのためにもお願いしました。さもないと小鳥たちは飢えて死ぬこととなるからです。
 
天使は彼らの悲嘆を憐れみ、祈りの一部を聞き届けました。その日以来、麦の穂のつき具合は今のようになったのです。

「麦の穂」のお話はこれでお終いです。

少し前の「令和の米騒動」もだんだん収まり、スーパーの棚には新米がずらりと並ぶようになりました。実りの秋に感謝しながら、おいしいごはんを頬張っています。

「食品ロス」の問題は解決が難しく、私も、気を付けているつもりでも食べ物を無駄にすることが多いですが、自然の恵みと食べ物を供給してくださる方々の尊い営みに、今、あらためて感謝の気持ちを深め、食べ物を大切にしていきたいと思います。

この物語は以下の本に収録されています。

最後までお読みくださりありがとうございました。
次回をどうぞお楽しみに。

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