【彫刻の今日】富井大裕 今日の彫刻 トルソー或いはチャーハン 栃木県立美術館
もう展示タイトルからして突っ込みたい気持ちが満載なのだがチャーハンはどこからきたんだ。
という訳で我が家では「画鋲の人」でお馴染みの富井大裕氏の個展を見るために栃木県立美術館へ行ってきた。
「画鋲の人」の所以はこちら
【何処となく、考現学的な】
赤瀬川原平さん的要素を感じつつもその違いというのは「意味の剥奪」だろうか。
赤瀬川原平さんが「無用の長物」を路上で見出したのなら、富井さんは路上で造形のみを抽出したというか。
そういうスナップが展示室の壁をずーっと続きつつ、どこかで見たことある様な道具が立体作品として成立するという展示。
富井大裕さんにつく冠は「彫刻家」である。
それが一抹のおかしみを生み、「でもこれは彫刻なのかも知れない。だって彫刻家が撮った写真だから」と脳内変換している自分もいる。
脳内にはデュシャンもチラつき始める。既製品、レディメイドなんていう言葉も脳内をよぎって行く。
そして小学生の息子2人は放置されたカントリーマ◯ムの包装紙が「今日の彫刻」とされている写真を見て「これからお菓子のゴミ捨て忘れて怒られたら彫刻って言えばいいんだ」と兄弟でクスクス笑っていた。
…お前らちょっと待て。
【我が家の風呂桶も作品か】
我が家で使っている風呂桶が作品の材料になっていて皆んなでウキウキになってしまった。
なんでしょうかね、このウキウキ感。
CD持ってるのに推しの楽曲がラジオから流れた時の嬉しさみたいな感覚でしょうか。
でも銭湯とかに置かれてたらこうは置かないよね、とか重ねて収納できるようにしてあるのでそれを無視した重ね方だよね、と桶の周りをぐるぐるしながらあーでもないこーでもないと話していた。
【ベビーデイ】
ベビーデイだったのか、フワッフワの赤さんが来館してて嬉しくなってしまった。
彼らの人生初の美術館体験が富井大裕さんの展示からスタートするって相当パンチが効いてるというか期待が持てますね。いいなー!
【さてここからは栃木のコレクション展示】
コレクション展示室は撮影禁止のため、写真はない。
【めっちゃオシャレな寒山拾得】
柄澤 齊(からさわひとし)氏の作品、「肖像XL寒山拾得」が物凄くオシャレだった。
ヨウジヤマモトを着た寒山拾得とでも言おうか。
ファッション寒山拾得。
版画作品のおかげで何処となくビアズリーのような雰囲気もある寒山拾得である。
もともと中国絵画の画題なわけだが、ここまで解釈が進むと面白い。
そういえば、東博で横尾忠則氏解釈の寒山拾得の展示が始まりますね!
あちらは拾得どころが寒山百得だそうで。
【え?富井大裕さんの展示?】
展示室のソファの上にガサっとバックがあったのだ。最初、誰かの忘れ物かな、それともここに置いて他見てるのかな?と思ったら持ち主らしき人が展示室内に居ない。だんだん、これは作品なんじゃないか、と疑い始める小学生男子2名。「もしかして富井さんの作品が常設展示室まで侵食してんじゃない?」と忘れ物の周りをぐるぐるし始める。me'的な感じもする。
そしたら、バックの主がやってきました。
ギャラリートークの際に使用したものらしく、慌てて取りに戻ってきた様子。
富井大裕氏の展示を見た後だと世の中全てが彫刻に思えてくるという体験を身をもってしてしまった。
【作品タイトル裏話のコーナー】
作品にタイトルをつけるという習慣は意外と近世になってからの習慣という話。なのでそれ以前の絵画は後世に画商等によりつけられたことも。
本国でのタイトル「牛の習作」→日本語タイトル「家畜」→現在のタイトル「朝の風景」の変容の話は思わず子供と笑ってしまった。
家畜て。風情もへったくれもないなー。
と、思うと展示作品名からだいぶ情報を得て作品を見ているのだなという事にも気がつく。
【リンクする展示】
都内企画展に呼応する展示もあり、素晴らしいカードを切ってくるのですよ、栃木県。すごいなー!
テート美術館展に呼応するターナーとコンスタブル。
ディヴィット・ホックニー展に呼応するディヴィット・ホックニーが描いた松島の展示。
この松島の絵が大型でなんとも言えない色味。
胸にくる。広い。良い。
カルフォルニアの風景でないホックニー。
日本を写した写真の作品は今まで見たが、日本の風景の大型油絵は初めて見た気がする。というか、描いてたのか!!
まさに、ここ、栃木でしか会えな名品の一つだろう。
ほっと皆で鼻息荒く展示室を降りてきたら
階段下にディヴィット・ナッシュ。
最後までぬかりない!栃木県立美術館、素晴らしい所です!