運動得意な人が持つずる賢い身体
運動が得意な人や体を使い慣れている人って羨ましい。
運動が苦手だったりする人はそう思う事もあるのではないでしょうか?そして、実際に得意な人に限っては、おそらくそれをあまりマイナスだと捉えることもないでしょう。
そんな私も、出来るものと出来ないものはありながらも、運動が得意な部類に入る人生を送ってきました。幼少期からスキーを始め、その後、ダンス、テニス、と様々な運動に触れてきました。そして、まぁ、それなりにこなせます。(私が苦手としていたのは鉄棒と縄跳び)
おかげで運動も好きだし、プラスになっていることもたくさんあると思いますが、実はそういう身体って、ずる賢い身体であることが多いんです。
身体のずる賢さって?
ずる賢い。これには良い意味も悪い意味も含みます。
良い意味でいえば、もし身体のどこかに使いにくい場所があったとしても他の部分がうまく使って、それになりにこなせる、ということ。本当は違うんだけれど、天才肌に見えたり、苦労していないように見えるかもですね。
悪い意味でいえば、使いにくい場所は使いにくいまま、他の場所をうまーーーーくごまかしながら使ってしまえる、ということ。誤魔化しながらでも、目的となる動作ができてしまっているので、その使いにくい場所を使えるように努力しないままになってしまいがちです。
ずる賢さの結果起こること
ちょっと器用で運動が得意っぽい人の身体には、この“ずる賢さ”が良くも悪くもあるケースが多いのではないかと思います。私も含めて。
側から聞いたら、それでダメなの?目的の動作ができるからいいじゃん、って思うかも知れませんね。
ダメではありません。ですが、その結果、それをし続けて起こることの一つに怪我があります。
使えるところを使い続け、使いにくいところは使わないままにしておくと、それは、使える場所に負担を掛け過ぎることにつながります。
反り腰の人の背中を反る動きで例えてみましょう。本来、反る動作は、背骨全体(頚椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨)が少しずつ伸展する(反る)ことで行われなくてはいけません。けど、反り腰で腰椎がもともと反りがちだったり、反るのが得意だったりすると、腰で反る動きの大半をこなし、動きづらい胸椎はそこまで動かさないまま済んでしまいます。
全体でやるべき動きの大半を腰椎に任せる。すると、どうなるか。もれなく腰痛まっしぐらです。それが癖になっていけば、大きな反る動きではなくても、反ることに関わる動きをする時にも常にそうなってしまっていて、慢性腰痛へ。そこまで来ると、ちょっとやそっとマッサージを受けたところでどうってことになりません。その時は良くても、また後で痛くなる。だって、常に仕事の大半を腰が担っているわけなので当たり前です。
ずる賢さの下で起こっていること
この使いやすい場所を使い過ぎ、使わない場所をそのままにしてしまうことについて、私がコース(*)生によく使う表現があります。
大きなグループで何か1つのプロジェクトに向かっているとして。すごく仕事が出来る人と出来ない人がいた時、仕事ができる人がさっさと色々やってしまうのは手っ取り早いんです。仕事が出来ない人に教える労力よりも、プロジェクトを早く完成させる方向に向いてしまいがち。けれど、これが単発のプロジェクトならともかく、この後、何回も何回も続いたら?仕事が出来る人たちは過労で疲弊していきます。結果、プロジェクトも成功しない。
その時には面倒に感じるんだけれど、仕事が出来ない人に、どうしたら出来るのかを教えていく労力は実はとても大切だったりするんです。仕事が出来る人を守るためにも。そして、仕事が出来ない人に自信を持って動いてもらえるようになるためにも。
結局、身体ってそうやって働いてくれているんです。生き抜くために。そんなに簡単にはいかないこの人生を進むために、身体を試行錯誤しています。ずる賢さが助けてくれる場面もたくさんあるでしょう。
けれど、先ほど触れたように、それを闇雲に続けていると、いつか悲鳴をあげるんです。では、どうやってそのずる賢さに向き合っていけばいいのか。
ずる賢さを見つけ方
どこでずるをしているか、ということは、自分で見つけにくいことが多いんです。目的を達成するために自然にやってしまっていることが多い。
①なので、運動が得意だったり、ちょっと器用にこなせてしまう認識がある人は、常にちょっと「これは本当にできているんだろうか」と少しだけ懐疑的になってみるのをおすすめします。「すごく反っている気がするけど、これって、腰だけでやっちゃってないかな?首だけでやっちゃってないかな?」とちょっと身体に尋ねてみる。
②または、見る力のある人にしっかり見てもらいましょう。ピラティスでもヨガでもトレーニングでも、見る力のある指導者は、簡単に見抜いてくれます笑!(どんなジャンルでもプライベートの方がおすすめ)
現実に気づき、受け入れる
さて、ずる賢い部分や癖が見つかったら、まずは受け入れていきましょう。「でもこの動きできちゃうし」とか思わず、「こういうやり方すると出来ないのかも!!出来ないなんて面白い!」と思ってもらえると向き合いやすいかな、と個人的に思ったりします。
運動が得意で生きてきてたりすると、最初この指摘が受け入れられない事も多かったりするんです。もしくは、受け入れはしても、向き合うのが面倒臭くなっちゃたり。だって、目的とする動きは別に出来ちゃうわけですからね。
でも、ずる賢い部分や癖の発見は、宝を発見したのと同じ!!...と私は自分のクライアントや生徒さんたちに伝えています。今まで使えていなかったところが見つかれば、そこを使えるようになることでパフォーマンスは上がり、怪我からも一歩遠ざかれます。
ずる賢さは時にタチが悪い
そんなわけで、使えないところを使えないままにしていても、動けるし、出来るし、(今は)痛くないし、別に問題ないジャーン、ってなってしまうこともよくあります。だからこそ、ずる賢さってタチが悪いんですよね。
動ける人より、動けない人の方が、真摯に取り組み、探求することも多いです。自然にやっても出来ないから、探求することで、出来る術を手に入れようとする。それゆえ、怪我もしにくかったりすることも。だから、運動が苦手、という人も、それは時にマイナスではなかったりするんです。
ずる賢さが現れやすい時
ズバリ、日常動作や、早い動作、大きい動き、慣れた動き、をする時にもれなく現れます。新しい動きや、ゆっくりな動きの時には現れにくい。ゆっくりな動きの時には、現れにくい、というより、誤りがあると気づきやすい、という感じです。
それもあって、慣れた運動ばかりしないように、私はよく勧めます。例えば、ピラティスをする人にはヨガを、ヨガをする人にはピラティスを、ダンスをする人にはトレーニングを、走る人にはダンスを、みたいな感じです。ラジオ体操だってOKです。とにかく、スピードを変えてみる(普段早い動きの人はスローなものを、スローな人には早いものを)、動きを変えてみる、というのはシンプルに癖から脱却するきっかけになりやすい。
ずる賢い身体をお持ちですか?
もし、これを読んでいる方の中に、私のように、なんとなく運動が得意だったり、器用にこなせたり、もしくは器用ではなくとも1つのジャンルでだけ能力を高めてきている人がいたら、
一度、自分の身体はずる賢くないかな?と、意識してみてください。
からだの機能を向上させたり、パフォーマンス力を上げたり、怪我や痛みのある動きから離れたいとき、ここを通らずしては難しいです。
私のずる賢い身体
何を隠そう、上にあげた反り腰の例は私の例です。反る時、脚を後ろに上げるとき(伸展)、腰を反ってしまいがちで、慢性腰痛。それでも、そんなずる賢いからだがあったからこそ、ダンサーとしてそれなりの実績も積んでくることができたし、痛みに悩んできたからこそ、今の私がいます。
今でも身体のずる賢さは健在なので、常に、「これって本当にやってるのかな?」と身体に声がけするようにしたり、人に動きを見てもらったりしています。ここの手を抜いていると、動かさないところは本当に動かさないまま過ぎちゃって、身体と動きのポテンシャルが落ちますからね。
もちろん、痛みさえ生まれていなければ、生きていくうえでは問題はありません!
だから、世の運動得意組の皆さんや、身体を動かす世界で生きていて痛みに苦しんでいる方、自分の持っている能力をもっと活かしたい!という方にだけ実践してもらえたら嬉しいな、と思います。
どこでずるをしてしまうのか、
そういった自分の癖に気付けるようになっていき
そこに変化をもたらせる時、
からだは進化していくし、
痛みがある人は改善していくことにつながっていきます。
(動くことが得意な人で、からだに痛みがある人は、この“ずる賢い”ケースがけっこう多いのかも)
からだを動かすことが得意な人に多いこの症状。得意なだけに、使えない事実に向き合うのがつらかったりもしますが、心の中では気付いていたりもします。痛みによって気付かされる時もありますしね。
せっかく身体を使うのが得意なんです。よりうまく使う道を見つけても良いかもと思います!
改善させていくには時間がかかるけれど、そこを抜けた時、今までの運動感覚の良さとの相乗効果で、能力が開花しやすくなっていきますよ。
私もまだまで地道に向き合っていきたいと思います♪
(*)動きの指導者のための知覚と言葉で動きを引き出すコース【ホリスティック・システム】
*そんな私が悩んだ観点から伝えているダンス基礎基礎WSシリーズも。
人見知りで、一人でも平気な顔はしていますが、応援してもらうことで力を得て、サポートされることはとても心の支えになります。サポートしていただけたら、すごく嬉しいです!