バイクと会話する
良い年をしてこんなメルヘンなことを言ってると
「このオッサン大丈夫か?」
と笑われそうで怖い感じもしますが・・・(笑)
正直に、包み隠さずに心の内を告白しましょう。
僕は、バイクで走っている間、ほぼ例外なくバイクと会話をしているような感覚があります。
当たり前のことですが、言葉ではなく肌でバイクの意思を感じ取るような感覚で、それに対する答え方は僕の体全体、或いは手で、足で返事をする。
僕からお願いをする時にも体や手足で意思を伝えると、バイクの方でそれを理解してくれて、僕の意思通りに動いてくれたり、止まってくれたり・・・
こんなことをどう表現して良いかわからないので、
「会話しながら走る」
と表現しています。
もしかすると、普通の人には理解しにくいことかもしれませんけどね。
つい先日もそうでした。
峠道で左コーナーをまわっている時に
「このままだと対向車線にはみだすぞ」
とCBから何か信号のようなものが伝わってきました。
なので後ろブレーキを軽く踏んで微妙に減速したらピタッと狙ったラインを
トレースできました。
他のコーナーでもありました。
コーナーの入り口で思っていたよりもコーナーが深く回り込んでいることに気付いたので、
「やばい!オーバースピードじゃん!」
と思いましたが、そう思った瞬間には無意識にけっこうきつめのブレーキングをしていて、何事もなくコーナーを抜けることができました。
なんだか、僕の意思が勝手にCBに伝わってCBがブレーキングしてくれたような錯覚をしているような気分なんです。
無意識のうちにブレーキングしているというだけのことかもしれませんが、ブレーキをかける強さの度合いまで調整してくれていたので自分の意思でブレーキをかけたという気がしていないんです。
僕は決して自分のライディングが上手いとか、テクニックがあるなんて少しも思ってはいません。
32年間まったくバイクに触れることなく生活をして、リターンしてからまだ7ヶ月ですしね。やっと勘が戻ってきたかなという程度です。
シンプルに言えばバイクが出来過ぎるくらい良くできているってことなんでしょうね。
ひとつひとつの操作をきっちり的確に意識して上手に運転しようと思わなくてもバイクの方でそれをしてくれる。
何かおかしなことを察知するとバイクの方からそんな信号を送ってくれたり
挙動変化で知らせてくれたり、バイクが優秀なんです。
40年前まで僕が乗っていたどのバイクも本当に良くできたバイクばかりでしたけど、最近のバイクはもっと進んでいて優秀なんだなぁと感じる次第です。
僕が一般のバイク乗りの人達と違うところは、若い時にはプロとして毎日バイクに触れていたので、趣味としてバイクに乗る人に比べれば
少なくとも機械的な構造やバイクが動く原理などは知っていますし、
実際に分解して中身を見て、傷み具合によってどんな不具合が発生するかも知っています。
もちろん部品を点検したり交換したりもしています。
そういう経験も、「バイクとの会話」に一役買っているのかもしれません。
バイク乗りの多くの人達が速く走るためのテクニックを持とうとします。
でも本当は、事故や転倒などを回避するためのテクニックや、危険な思いをしないですむようなテクニックを持つことの方が大事です。
僕らは一般公道を走っているわけですから。
でも、僕は平均的なバイク乗りの人達よりもけっこう速いペースで走ります。
速く走ろうとしているわけではなくて、僕が気持ち良いと感じるリズムやペースが、他の人達よりも少し速いというだけのことなんですが、
決してむやみやたらとスピードを出しているわけではありません。
常にバイクと会話をし続けながら走っています。
そうしないと、僕はとても臆病なのでまともには走れないんです。
リアサスが今どんな状態なのか
リアにトラクションがどの程度かかっているのか
タイヤの滑りやグリップはどうか
そんな事を感じ取りながらアクセルを操作したり・・・
ブレーキのかかり具合はどうか
リアを少し強めでフロントは弱くするか
状況によってはリアブレーキをあてながらアクセルを少しずつ開けていく方が良さそうだなんてことをしたり・・・
目の前の小さな路面の凹みを踏んだ瞬間にどの程度の衝撃があったか
そんなことを感じ取りながら路面上の凹凸を避けるべきか踏んでも大丈夫かを考えてみたり・・・
エンジンの回転数がどの程度なのかをエンジン音や排気音で掴みながら
回転数を一定に保つように操作をして、エンジンブレーキにも立ち上がりの加速がもたつかないようにするためのアクセルワークにも対応できるような回転数を維持するとか・・・
同時に目の前のコーナーの路面の上に仮想のラインを描いてそれをトレースして欲しいとバイクに伝えるとか・・・
バイクの傾きにはまだ余裕はあるか
もう少し倒した方が良いか、軽く外足を踏ん張って少しだけ起こしてみようかなんてことをしたり・・・
こんな会話をしながら走るわけですが、こんなことができる機械はバイク以外にはありません。
だから僕はバイクが大好きで仕方がないのです。
もちろん、バイクを転倒させて壊すようなことも、僕自身が怪我をすることも嫌です。
どんな事故であろうと絶対に避けたいと思います。
だから常に臆病なままで走っています。
臆病だから、すべての事をきちんと把握してコントロールしていないと嫌なのです。
そのために全集中で走ります。
バイク以外のことでこんな高い集中力を発揮することはまったくありません。
この集中力だからこそバイクとの会話が成立するのだろうと勝手に思っています。
他のバイク乗りの人達も、僕と同じように会話をしているのでしょうか?
それとも、こんなわけのわからないことを言ってるオッサンは僕だけなんでしょうか?
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