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会社の風土は経営者がつくっている

[要旨]

業績のよくない会社経営者は、自社の業績がよくない原因を、景気や経営環境など、外部に求めてしまいがちです。しかし、どんな経営環境でも業績がよい会社があることから、経営者自身が考え方や活動を変えることで、業績が改善すると考えることができます。すなわち、業績がよくないときは、外部に原因を求めず、自分にあると考え、能動的に改善に臨むことが重要です。

[本文]

今回も、前回に引き続き、島根電工の社長の荒木恭司さんのご著書、「『不思議な会社』に不思議なんてない」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、島根電工では、新入社員にマンツーマンで世話係の先輩社員がつき、半年間にわたって公私ともに新入社員の面倒を見るという、ビッグブラザー制度を実施していますが、この制度によって離職率がほぼ0%の状態を実現しているということについて説明しました。

これに続いて、荒木さんは、地域の経済活性化のために、フランチャイズ事業を始めたのですが、加盟店の経営者に対して行うアドバイスについて述べておられます。「(フランチャイズに加盟している会社の経営者に)島根電工グループが伸びている話しをすると、『それはあなたが社長だからでしょう』、『あなたのところの社員が優秀だからでしょう』、『あなたのところは社風がいい、うちにはあんなにいい風土はない』と言われます。そんなとき、私はこう答えることにしています。

『成功する方法をお教えしましょうか?(中略)それはあなたが辞めることです』ちょっと強烈ですが、冗談めかしてそう言うと、相手はようやく気づきます。『あなたの会社の文化や風土は、経営者であるあなたがつくっているんですよ。だから会社を変えたかったら、まず、あなたが変わることですね』そうやって経営者の意識を変えていくと、徐々に会社の文化や風土が変わっていきます。(中略)今、日本には、個人、法人を合わせて、420万社の会社があると言われています。

その73%が赤字です。日本の企業の9割は中小企業なので、その大多数は赤字だと思っていいでしょう。そして、経営者の多くは、赤字の理由を、自分以外に求めます。自分の会社の業績がよくないのは、『景気や政策のせいだ』、『こういう業種・業態だからダメなんだ』、『企業規模の大きいところに負けるのは当たり前だ』、『ロケ―ションが悪いからダメなんだ』、『近くに大型店ができて客をとられたからだ』とか……。

すべて原因は外にある。本当でしょうか。私は、これを、『中小企業の誤解・錯覚・甘え』と呼んでいます。なぜなら、景気が悪くても、ロケーションが最悪でも、企業規模が小さくても、近くに大企業があっても、絶好調の企業はあるからです。(中略)外的な要因は、自分の力では変えようがありません。変えられるとしたら、自分の方しかないのです」(188ページ)

荒木さんの、「経営者が変わらなければ、会社も変わらない」というご指摘については、これをご理解していない人はいないと思います。ところが、現実には、経営コンサルタントである私に、「部下の能力が低いので、あなたが教育して改善してほしい」、「銀行に融資を打診しても、なかなかよい反応が得られないので、自分に代わって説明してきて欲しい」というご依頼が、しばしば、届きます。

これについては、「業績を改善するためには、社長である自分が変わらなければならないことは分かっているけれど、目の前の課題はすぐに解決しなければならないので、とにかく今は外部の専門家の支援を得て、直ちに解決したいと考えている」ということなのかもしれません。これについてはその通りだと思います。では、「目の前の課題」を外部専門家の支援で解決した後、ご自身は変わろうとするのでしょうか?

これについては、明確な根拠を示すことはできないのですが、「目の前の課題」が解決すれば、それで安心してしまう方が多いと、私は感じいています。そして、その後、しばらくすると、また同じ課題に対処しなければならなくなり、結局、いつまでも経営者は同じ状態にでいることになってしまいます。とはいえ、このようないつまでも変わらない「経営者」の行動パターンは、私自身にも当てはまっているかもしれません。人は、強く意識しないと自分を変えることは難しいということを、荒木さんのご指摘を読んで改めて感じました。

2024/3/7 No.2640

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