悪貨人材の暗躍は『裏話禁止令』で対抗
[要旨]
会社の業績低迷時は、下位2割の悪貨人材が、会社に対して批判を行うことがありますが、そのような場合は、会社の情報をオープンにして、裏話禁止令を出し、建設的な意見を出す人たちにイニシアティブを握ってもらうようにすることで、良貨人材が悪貨人材を駆逐できるようになります。
[本文]
今回も、前回に引き続き、山田修さんらのご著書、「プロフェッショナルリーダーの教科書」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。同書の執筆陣の1人である、「社長のヘッドハンター」の井上和幸さんは、社内の情報公開について述べておられます。
「『悪貨は良貨を駆逐する』という『グレシャムの法則』ではありませんが、会社組織においても、特に不況期や会社の業績低迷には、下位2割の集団と言う『悪貨人材』が徒党を組んで暗躍し、経営批判や手抜きのススメを裏で吹聴しまくることがあります。このことに頭を悩ませている経営者やリーダーは多いと思いますが、防ぐことは簡単で、解決策は、『オープン化』しかありません。すべてのコミュニケーションや業績情報、中間指標(KPI)数値、財務指標、意思決定の経緯、判断基準などを、徹底的に公開して共有するのです。
つまり、良い話も悪い話も、正しい判断も間違えてしまった判断も、すべて公開し、『裏話禁止令』を出すわけです。経営者・リーダーのみなさんには、オープンなコミュニケーションが担保されている土俵をつくり、そこで建設的な意見交換、提案を行うメンバーに、主導権を持たせてあげることに、徹していただきたいと思います。オープンな企業風土や仕組みをつくることができれば、『良貨人材が悪化人材を駆逐する』ようになり、組織はみるみるうちに息を吹き返します」(176ページ)
この「会社の情報をオープンにして、裏話をできなくする」ということは、良い人材が活躍できるようにするだけでなく、事業活動を組織的にして行くためには、とても重要な要素です。やや、性質が違うかもしれませんが、「内部統制」を機能させるということは、情報のオープン化と重なる面が大きいと思います。したがって、事業を発展させるためには、情報のオープン化は避けることができないと、私は考えています。
ところが、この情報のオープン化は、特にオーナー経営者にとっては、とても勇気のいることのようです。会社の情報の公開を限定的にしている会社は少なくないですが、その理由のひとつは、会社の収支状況などを従業員に知らせることで、無用な心配をさせたくないと考えているという面もあると思います。しかし、事業活動を組織的なものとしていくことは、オーナー経営者がオーナーとしての責任を減らし、従業員の方たちに分担していってもらうという面もあります。
ただ、中には、情報のオープン化を避けたいという理由で、事業規模の拡大をしないという選択をしている経営者の方もいると思いますし、事業が黒字であるという前提ですが、そのような考え方で経営に臨むことは問題ないと思います。しかし、裏を返せば、事業の拡大を考えていながら、なかなか拡大できないという会社は、情報のオープン化や組織的な活動のための体制づくりができていないことが原因と考えられます。そのような場合は、経営戦略などの妥当性の前に、情報のオープン化などの体制整備を検討する必要があると思います。
2022/7/10 No.2034