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事業の目的は利益を得ることか?

[要旨]

一般的に、事業の目的は利益を得ることと考えられています。しかし、利益を得ることを曲解し過ぎると、法令に触れることをしてでも利益を得ようとすることもあります。また、法令に触れなくても、顧客の信頼を欠くようなことをしてしまうこともあります。したがって、利益を得ることだけに気をとられることがないようにしなければなりません。

[本文]

大阪ガスエネルギー・文化研究所の主席研究員の鈴木隆さんのご著書、「御社の商品が売れない本当の理由-『実践マーケティング』による解決」を拝読しました。鈴木さんは、同書で、マーケティングは事業を支えるために不可欠な機能であるが、そうであれば、事業の目的を踏まえておく必要があると述べておられます。「事業の目的はなんでしょうか。(中略)よくある答えが、利器、売上、価値の3つですが、中でもいちばん多い答えが利益です。(中略)

確かに、利益を出さないことには、事業を継続することができませんので、利益が目的であるとする考え方も成り立ちます。現に、伝統的な経済学では、利潤の最大化こそが企業の目的とされてきましたし、実際、多くの企業でもそのように考えられています。ところが、利益を事業の目的としてしまうと、不都合なことが起こります。例えば、食品の原材料や生産地を偽り、高級品であるかのように見せかけて、高く売りつけたり、本来の消費期限を偽って売りつけたりする食品偽装が起こることがあります。(中略)

さすがに偽装まではしなくても、目先の利益を出すために、長い目で見れば顧客を失うようなことをしてしまいかねません。例えば、少しでも利益を出そうとして、投げ売りのような極端な値引き販売をしてしまい、それまで正価で買ってくれていた顧客の不興を買って、二度と買ってもらえなくなったり、新たな顧客も正価では買い控えるようになったりするようなことです」(22ページ)

私は、基本的に鈴木さんの考え方と同じ考えを持っていますが、2つの点で異論があります。1つは、食品偽装が起きる原因についてです。仮に、事業の目的が利益であるとしても、それは、法令を破ったり、道徳に反することをしたりすることを前提にはしているとは言えないのではないでしょうか。

確かに、食品偽装のような法令違反は起きていますが、それは、単に、食品偽装をした会社が法令を破った、すなわち、ずるをしただけでしょう。法令は無条件に守るべきものであり、利益を目的とした活動は法令を破ることであるという主張は、少し、乱暴だと私は考えています。とはいえ、このことについては、枝葉の部分のことなので、それほど議論する必要性はあまりないと思います。

2つは、会社は、やはり、最終的には利益を得なければならないと、私は考えています。というのは、会社の評価は、会計上の数値で評価されるからです。確かに、経営者の目線では、会社の能力はポテンシャルの面まで含めて評価すべきと考えることは理解できます。例えば、新たな事業を始めて、3年目までは赤字でも、4年目以降は黒字に転じ、10年目までには投資額を回収できるということがあると思います。

もちろん、そういう場合は、3年目の時点で利益が出ていないから、その事業は評価できないと判断することは不適切だと思います。でも、長期的には利益が出なければ、一般的には評価できないものだと私は考えています。ただ、鈴木さんは、事業の目的は利益ではないと述べておられるものの、私と同じ考えをしていると思います。すなわち、鈴木さんは、短絡的に利益を求めるよりも、長期的、かつ、継続的に利益を得ることが重要であり、浅はかな活動はしてはいけないということをご主張しておられるのだと思います。

2023/2/18 No.2257

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