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目標を見える化し達成感を感じてもらう

[要旨]

島田慎二さんは、千葉ジェッツの社長時代に、人事評価基準を明確するだけでは足らず、さらに、動機づけのために、従業員の方に、目標達成を感じてもらう仕組みをつくったそうです。そうすることで、自分が必要とされている、役に立っていると思えることになり、自己への評価や誇りをもたらし、満足感を生むことになるからということです。

[本文]

今回も、Bリーグチェアマンの島田慎二さんのご著書、「オフィスのゴミを拾わないといけない理由をあなたは部下にちゃんと説明できるか?」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、島田さんが千葉ジェッツの社長時代に、人事評価の基準をフェアで透明性のあるものにするために、絶対評価を行い、さらに、島田さんの考えをすべてオープンにして、高いレベルのスキルを蓄えれば、誰でも高い評価を得られるチャンスがあることを明確にし、従業員の方たちの意欲を高めたということを説明しました。これに続いて、島田さんは、評価基準を明確にして従業員の不満を解消するだけでは足りず、目標を達成してもらい達成感を感じてもらうようにすることが重要ということを述べておられます。

「千葉ジェッツでは、既に行っている、残業の原則禁止や、スタッフ全員に納得のいく給料を出すための取り組み、フェアでオープンな人事評価など、福利厚生・処遇・給与などの見直しは、『不満足要因をなくす』ことに直結していると言えます。しかし、それらは社員にとって非常に価値の高いことであるのは事実ですが、それだけで社員の満足度を維持することはできません。なぜなら、こういった体制的な面からのアプローチは、初めのうちは大きな喜びにつながったとしても、そのうち、その状態が当たり前になってくるからです。ですから、『不満足要因をなくす』だけでは、長期的な視点でとらえると、仕事に対するモチベーション向上につながらないと思っていた方がいいでしょう。そこで重要となるのが、動機づけです。

動機づけとは、『仕事を任される→知識や経験が活かせる→上司・同僚に認められる→大きな達成感を得る』という循環で、本人のモチベーションが向上します。自分の能力を発揮して、周囲から承認されることによって、達成感を強く感じることができるわけです。その根っこの部分で、仕事を任せてもらうために必要なのが、目標を『見える化」することです。(中略)曖昧だっと目標を『見える化』してあげることで、常に目標と向き合い、目標から逸れずに頑張ることができるのです。さらに、個々人の目標だけでなく、会社全体の経営理念を共有することで、会社に貢献しているという意識が仕事の満足度を高めてくれます。自分が必要とされている、役に立っていると思えることが、自己への評価や誇りをもたらし、満足感を生むのです」

この島田さんのご説明は、ハーズバーグの動機づけ-衛生理論に基づくものと思われますので、ここで改めて詳しい説明は不要だと思います。ところが、これも広く知られている理論であるにもかかわらず、「動機づけ」を実践している中小企業は少ないようです。その理由としては、前回説明した評価制度を制定し明文化することと同様に、これも経営者にとっては労力がかかるからだと思います。ただ、これも島田さんがご指摘しておられるように、従業員のモチベーションが高まる仕組みをつくることが経営者の役割であると認識すれば、直接的な事業活動はなるべく部下たちに任せて、むしろ、経営者はこのような仕組みづくりに軸足を置くべきだと、私は考えています。

そこで、私は、できれば、経営理念を達成するためのKPIを設定し、それを部や課、そして個人までブレイクダウンすることが理想だと思っています。とはいえ、最初からそこまで実践することは難易度が高いと思うので、最初は、ジョブディスクリプション(職務記述書)による部下との面談を、3か月、または、6か月ごとに行うことから始めるとよいのではないかと考えています。そして、繰り返しになりますが、このような活動は、各従業員の方が会社で働いていることについて、単に、会社に来て指示に従って動いているだけという認識から、自分の行動が会社の目標や経営理念の達成のために貢献しているという認識を強く感じてもらうことができるわけです。そのことが、島田さんのいう動機づけであり、「よい働き」をする従業員が増えることにつながると言えます。

2023/7/26 No.2415

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