新卒は会社を俯瞰して見る社員になる
[要旨]
岩崎裕美子さんは、他の経営者の方に、会社の一体感を出すためにどうすればよいかと相談したところ、新卒採用を行うことを薦められました。新卒者は、戦力になるまで時間を要するものの、会社の価値観を直ちに受け入れてもらえるほか、異なるキャリアを持つ先輩たちを中和する役割もあるからです。そして、当初は反対されたものの、岩崎さんは新卒採用を実施した結果、その思惑通りになりました。
[本文]
今回も、前回に引き続き、株式会社ランクアップの社長の岩崎裕美子さんのご著書、「ほとんどの社員が17時に帰る売上10年連続右肩上がりの会社」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、岩崎さんの会社は、かつては、岩崎さんが細かいことまで口出しをしていた結果、従業員は受動的にしか仕事に臨むことができませんでしたが、会社の価値観を『挑戦』とすると公表してからは、それに基づいて、従業員が自ら判断し、能動的に仕事に臨むようになったということを説明しました。
この後、岩崎さんは、ある経営者向けの研修会に参加した際、他の参加者の経営者の方に、「弊社はまだ会社の一体感がないので、どうしたらよいか」という相談をしたそうです。これに対し、ある方が、次のような助言をしてくれたそうです。「10年間、中途採用で社員を増やしてきたけれど、社員の価値観がまるでバラバラで、全員が同じ方向を目指さない。社長自身も会社を変えたい、新しいことに挑戦したいのに、社員はまるでついてきてくれない。そこで、悩んだ末に、思い切って新卒採用を始めたら、それが大成功。
新卒採用が、なぜ、いいかと言うと、新卒社員は、会社の理念や価値観に賛同して入社してきてくれるので、会社がすき。だから、配属先にこだわりがない。人事異動もしやすく、結果として、会社を俯瞰して見る社員が育ちやすい。一方、既卒の社員はスキル採用が多く、自分の過去のスキルをもっと成長させたいと思っています。そのため、人事異動がしにくく、組織が縦割りになりやすいのです。この社長の会社では、新卒採用をしたことで、既卒社員も刺激を受け、今では既卒社員も新卒社員もイキイキと働いていると言います」(152ページ)
岩崎さんも、その後、他の従業員からの反対があったものの、それを押し切って、2013年3月に、3名の新卒者に内定を出したそうです。そして、結果として、新卒採用は成功したそうです。というのも、新卒者は素直で、先輩たちから好印象を持たれ、また、先輩たちが業務を教えることで、自分の仕事への理解を深めることができたからだそうです。もちろん、既卒者と違い、新卒者が戦力になるには時間を要します。
でも、岩崎さんも述べておられるように、新卒者は社会人経験がないからこそ、自社の価値観をそのまま受け入れてもらうことができるので、ある意味、自社の「オリジナルの従業員」を育成することができるわけです。さらに、それまでのキャリアが異なる既卒従業員同士を中和する役割を持ってもらうこともできます。確かに、新卒を採用するには、戦力がつくまでに時間を要するということで、躊躇する経営者の方もいると思いますが、事業が拡大していけば、早晩、新卒採用は行うことになるわけですから、岩崎さんのように、早めに行うことがよいと、私も考えています。
2023/8/19 No.2439