『やり抜く力』が才能の2倍重要
[要旨]
ヤマト運輸第2代社長の小倉昌男さんは、宅急便の立ち上げ時に、『サービスが先、利益は後』として、なにはなくとも実行を徹底させ、宅急便事業を成功に導きましたが、このような事例から、戦略を成功させるには、戦略の良し悪しよりも実行力の方が重要と考えることができます。
[本文]
今回も、大阪ガスエネルギー・文化研究所の主席研究員の鈴木隆さんのご著書、「御社の商品が売れない本当の理由-『実践マーケティング』による解決」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回は、現在は戦略がコモディティ化していることから、事業活動を実践するなかで有効な戦術、戦略(創発型戦略)を見出していくことが、業績向上の決め手となるので、マーケティング活動を軌道に乗せるまでは、何度かテストマーケティングを行って、より効果の高い戦略を探っていくことが大切ということを説明しました。
これに続いて鈴木さんは、マーケティング活動が成功する要因は、理論よりも行動力であるということについてご説明しておられます。「そもそも、起業における事業計画書の作成は、ベンチャーキャピタルからの出資の獲得や、初期段階の事業の存続とは相関関係がない、という研究結果が報告されています。実際、Amazonでは、サービス開始から1年経っても、まだ、きちんとした事業計画はなかった、という説もあります。
また、適切に策定された戦略のうち、実行に成功するものは10%にも満たないという調査結果も発表されています。たとえそれなりの戦略があったとしても、実に90%以上が実行段階で失敗するわけです。言うは易く行うは難しとは、正にこのことです。いまや実行力が企業の勝敗を分けるようになっています。期待通りの結果を出せないのは、たいていの場合、実行力の不足が原因なのに、戦略など、他の原因によるものだと、よく、誤解されています。(中略)
宅急便の立ち上げ時に、『サービスが先、利益は後』として、なにはなくとも実行を徹底させた、ヤマト運輸の小倉昌男は、ははり傑出しています。とにかく、やり抜くことです。個人が成功するには、情熱と粘り強さからなる、『やり抜く力(グリット)』が才能の2倍重要であることが、最近の心理学の研究で明らかとなっています。個人が集まった会社や組織置いても、同様なのではないでしょうか?」(158ページ)
鈴木さんは、「『やり抜く力』が才能の2倍重要」と述べておられますが、これについては、私は論理的な裏付けを述べることはできないものの、これまでビジネスに携わってきた経験から、鈴木さんと同じように考えています。また、このように考える経営者の方も、決して少なくないと思います。しかしながら、これも鈴木さんがご指摘しておられますが、事業活動がうまくいっていない会社の事例をみていると、理論先行になっていることが多いと、私も感じています。
そうなってしまう理由は、そのような会社は、理論を重視しているというよりも、行動力の高い組織づくりを避けているからだと思います。士気の高い組織や、難易度の高い戦略を遂行できる組織の方が、事業活動も競争力が高いということは容易に理解できると思いますが、そのような組織は一朝一夕ではつくることが困難なため、「成功するノウハウ」などに頼ろうとする経営者が多くなってしまうのでしょう。繰り返しになりますが、現在は、より高度な戦略でなければ競争に勝てなくなりつつあるわけですから、それを遂行できるような組織の能力を高める役割が経営者に求められています。
2023/3/13 No.2280
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