スーパーのクッキーをデパ地下価格に
[要旨]
北海道のスーパーマーケットでは、クオリティが高いにもかかわらず、推奨小売価格が低い商品に対して、POPなどで「デパ地下レベルのおいしさ」と表示したところ、推奨小売価格よりも2割高い価格でも爆発的にヒットしました。このように、販売する商品の価格の妥当性を判断する材料を顧客に提供することで、顧客からの支持を得ることができるようになります。
[本文]
今回も、小阪裕司さんのご著書、「『価格上昇』時代のマーケティング-なぜ、あの会社は値上げをしても売れ続けるのか」を読んで、私が気づいたことについてご紹介します。小阪さんによれば、「お客さんは、自分の記憶から『勝手に』その商品やサービスの価格の妥当性を判断している」そうです。(ちなみに、その、お客さんが判断する価格は、内的参照価格というそうです)しかし、その判断の基準を、売り手が設定することで、値上げに成功した事例を、小阪さんは紹介しておられます。
「(スーパーマーケットのデイリーショップヤマモトの)店主の山本順一氏が、あるメーカーのアーモンドクッキーを食べてみたところ、非常にクオリティが高かった。しかし、残念なことに、パッケージがイケていなかった。パッケージさえ高級感のあるものにすれば売れるはずなのに、もったいない。ちなみに、この商品の推奨小売価格は258円だった。しかし、店主は、『本来なら、デパ地下で500円くらいの価格で売っていてもいい商品だ』と判断した。
そして、POP等で、『デパ地下レベルのおいしさ』、『500円の価値がある』などのメッセージを添えて、推奨小売価格より2割ほど高い、ほぼ定価の298円で売り出した。すると、これが爆発的にヒットし、たった23坪の店であるにもかかわらず、今やこの店が、山本氏が所属するチェーン店の中で、この商品を北海道で1番売っているという。つまり、この事例では、内的参照価格を、『スーパーのお菓子』から、『デパ地下のスイーツ』に変えることで、より高い価格で販売することができたと言える」(107ページ)
価格が高いかどうかは、小阪さんがご指摘しておられる通り、買う側の「主観」で判断しているわけです。これは当たり前のことでありながら、売る側には忘れられがちな視点なのではないでしょうか?だからこそ、引用の事例のように、価格の妥当性を判断する基準を売る側が提供するという働きかけはあまり行われておらず、実践することで成功につながったのだと思います。
とはいえ、引用の事例のような働きかけは、すべての商品に対して行なうことができるわけではありません。ただ、繰り返しになりますが、価格が高いかどうかは顧客が判断しているということを認識した上で、それにどう対処していくのかという視点での活動を継続していくことで、引用の事例のような成功につながっていくのではないかと私は考えています。
2023/1/16 No.2224
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