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経営理念で一気通貫の経営を維持する

[要旨]

Bリーグチェアマンの島田慎二さんは、大木を経営になぞらえると、根っこが経営理念、幹が経営理念から生まれる経営目標、経営戦略、基本方針、行動指針など、大事な筋書きを示すもの、そして、枝葉が短期間の目標や、個々の目標など、より具体的なものを意味していると考えているそうです。そして、目先の数字や状況に、一喜一憂することなく、経営理念との乖離がないか見極めていくことで、一気通貫の経営が保たれ、健全にPDCAが回っている状態を維持することができるということです。

[本文]

今回も、Bリーグチェアマンの島田慎二さんのご著書、「オフィスのゴミを拾わないといけない理由をあなたは部下にちゃんと説明できるか?」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、経営環境が不透明な現在は、経営理念を定めることに意味はないと考える経営者の方は多いものの、経営環境が不透明だからこそ、経営理念を定め、会社の進む方向を明確にすることで、日々の活動が研ぎ澄まされ、業績が向上すると考えることができるということを説明しました。これに続いて、島田さんは、別の観点から経営理念の大切さを説明しています。

「会社経営を考える時、私は、1つの立派な大木をイメージすることがあります。大木は根っこが頑丈です。幹も太く、しっかりしていて、ちょっとやそっとのことでは揺るがず、真っすぐに高く成長していきます。枝葉も豊かで、花木であればきれいな花を咲かせたり、みずみずしい果実が実ったりすることもあります。それを経営になぞらえると、根っこが経営理念、幹が経営理念から生まれる経営目標、経営戦略、基本方針、行動指針など、大事な筋書きを示すもの、そして、枝葉が短期間の目標や、個々の目標など、より具体的なものを意味しています。

花や果実は、日々の活動に対するご褒美ととらえていいでしょう。私たちは、枝葉にあたる具体的な行動に身を投じていることが大半です。(それは)いわゆる日常の仕事です。そうした行動によって、例えば、営業なら、『売れた』とか、『契約成立』といった成果が見えますから、どうしても意識はそちらに集中しがちになります。うまくいっている場合なら、それでもさほど問題はありません。

しかし、『売れない』、『目標を達成できない』、『担当者が会ってくれない』など、思うようにいかない状態が続くと、目先のことに翻弄されるようになります。そのときに、重要なのが、根幹の強靭さ、その強靭さをつくるのは、社長です。中小企業の場合、社長に全責任があると言ってもいいでしょう。目先の数字や状況に、一喜一憂することなく、経営理念との乖離がないか、見極めていく、それができてこそ、一気通貫の経営が保たれ、健全にPDCAが回っている状態を維持することができます。それが『強い会社』なのです」(47ページ)

経営環境は、日々、変わるので、それに対応して、日々の活動もどのように行うべきかも変えていかなければなりません。でも、それだけであれば、事業活動は、単に、売上や利益を得るだけの活動になってしまいがちであり、会社の特徴や存在意義を見失ってしまいます。そこで、大木の根にあたる経営理念を明確にしていれば、事業活動の意義も明確になり、たとえ、短期的に利益が得られない時期があったとしても、経営理念に沿った活動をしていれば、日々の活動の意義を見出すことができるでしょう。これを続けていれば、長期的に事業活動は成長できるでしょう。

このようなことを実践している会社の例として、私は、「年輪経営」で有名な、伊那食品工業を思い出します。同社では、「成長は必ずしも善ではない、急激な成長は組織や社会、環境に様々なゆがみをもたらす、それは、社員を幸せにはしないだろう」という理念のもと、かつて、「(同社の主力商品である、かんてんぱぱを)1981年に販売を始めたところ、大手スーパーから全国展開の話が舞い込んだが、全国販売が実現すれば、売り上げは一気に増えるので、幹部の誰もが賛成したが、塚越会長は申し出を断った」ということがあったそうです。

もちろん、私も、塚越さんの考え方だけが正解と言い切ることはできないと思いますが、このような経営理念を重視することで、速度は決して速くはないものの、同社は安定した成長を続けています。繰り返しになりますが、根(経営理念)が強靭であれば、会社も強くなることは間違いないと言えるでしょう。

2023/7/13 No.2402

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