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出資を受ける時は投資家との相性が大切

[要旨]

コンサルタントの徳谷智史さんによれば、目先のお金につられて、自分たちとは考え方が異なる投資家やベンチャーキャピタル(VC)から資金調達したために、後になって揉めることがあるそうです。とはいえ、VCからの資金調達は有効な手段なので、出資相手を選ぶ際は、慎重に探さなければならないということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、徳谷智史さんのご著書、「経営中毒-社長はつらい、だから楽しい」を読み、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、経営者は、事業の成長のための舵取りをすることが役割なので、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書を一気通貫で管理しなければならないということについて説明しました。

これに続いて、徳谷さんは、創業時に投資家から出資を受け入れる時の注意点について述べておられます。「これまで私自身が多くのスタートアップへ出資し、支援してきて思うのは、エクイティによる資金調達は、『落とし穴』も多いので、注意が必要だということです。本当によくある失敗例は、目先のお金につられて、自分たちとは考え方が異なる投資家やベンチャーキャピタルから資金調達したために、後になって揉めることです。

株式と引き換えにお金を出してもらうということは、『口も出される』ことを意味します。『このお金、勝手に使っていいよ、何の報告もしなくていいよ』という気前のいい投資家はほとんどいません。やはり出資するからには成功して欲しいので、『良かれ』と思って、アドバイスや管理をしてきます。それを考慮しないで、自分たちが目指している会社や事業と考えが異なる投資家を選ぶと、十中八九揉めます。

投資家と起業家の間で方針の不一致が生じてしまうことほどの苦行はありませんが、相手は『株主様』です。株主の了承が得られないと、やりたいことができずに、事業がストップしたり、頓挫したりすることもありえるので、あからさまに対立するわけにはいきません。特に、創業初期は、喉から手が出るほどキャッシュが欲しいので、つい、『気前よく出資してくれる』投資家を、後先考えずに引き込んでしまうのですが、相手はお金を『くれる』わけではないのです。そこで、選択を間違えると、事業の足を引っ張ることになりかねません。

本来なら、事業に集中すべきところ、株主対応に多くの時間とリソースが取られてしまった会社を数多く目にしてきました。方針が合わない投資家がいる場合は、株を買い戻して、お引き取りいただくことは論理的にはありえますが、一筋縄でいくはずがありません。交渉するにも、心理的にも大きな負担が生じます。同じ値段で買い戻せることはほぼなく、『今まで関与したことの対価だ』と、法外に高い値段をふっかけられ、裁判になっているケースすらあります。エクイティの調達は、『やっぱりなかった』ことにはできず、基本的には不可逆なのです」(58ページ)

引用した事例は、失敗事例なので、投資家から出資を受けることは避けた方がいいという印象をもたれるかもしれませんが、きちんとした相手を選べば、強い味方になると、私は考えています。ただ、日本では、第三者から出資を受けるという例は、割合としては高くないと、私は感じています。その理由は、日本では、業績のよい会社でも、業績が振るわない会社でも共通していることだと思いますが、出資を受けることで、第三者が自社の株主として議決権を持つことになる、すなわち、自社の経営方針や役員人事に口を出すことになることは避けたいからということだと思います。

私は、そう考えることが、必ずしも、100%間違っているとは思いませんが、一方で、ベンチャーキャピタル(VC)などから積極的に出資を受けようとしている会社経営者の方は、VCは出資を専門的に行っている機関として、多くの経営ノウハウを持っており、その教えを請いながら自社を成長させていこうと考えているようです。すなわち、「株主からの口出し」を否定的に受け取るか、肯定的に受け取るかの違いです。

繰り返しになりますが、どちらかが誤っており、どちらかが正しいということではないのですが、経営者の方が単独で経営をしようとするより、部外者のノウハウを得ながら経営をしていく会社の方が、伸びるチャンスは大きいと、私は考えています。なお、本旨から外れますが、投資家からの出資ではなく、銀行からの融資を受けようとするときでさえ、「銀行に、いちいち、自社の業況を説明することは面倒なので、黙って希望する金額を融資してさえくれればいいのに」という不満を口にする経営者を、たまに見かけることがあります。

銀行は、融資した資金が返ってくる確実性が高くなければ融資を決めることができないわけですから、最低限、自社の業況や、融資金の使途、今後の業績見込みなどは、説明することは当然のことです。それは、融資を受ける側にとっては面倒ということは事実ですが、だからといって、情報開示は怠ってよいということにはなりません。そのような独り善がりの考え方しか持たない経営者は、会社経営そのものも拙いものとなり、いつまでも業績は改善しないのではないでしょうか?

2024/9/17 No.2834

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