見出し画像

仕事のできない人は『報告』も下手

[要旨]

銀行にきちんと融資申込ができない経営者の方は、会社の状況を適切に把握できていないので、事業を改善する活動もできないことになります。自社の状況を報告できる状態にまとめることは、銀行のためではなく、まず、自社のために必要であり、その能力も、経営者の方には欠かせません。


[本文]

書籍編集者の藤吉豊さんが、東洋経済オンラインに、「仕事のできない人は『報告』のコツがわかってない」というタイトルで寄稿をしていました。その中に、「ビジネスの報告で、具体的に話す方法は、(1)数字で語る、(2)固有名詞を入れる、(3)体験談を入れるの、主に3つが紹介されていました」ということが書かれていたのですが、私は、これを読んで、私が銀行に勤務していたときのことを思い出しました。

というのは、融資の申し込みに来る経営者の方の多くは、「融資を受けたい」という要望しか話しません。もちろん、融資を受けたいとだけ言われても、融資の可否を判断できませんので、具体的な情報を聞き出すために、いろいろな質問をします。そこで、必要な融資額とその根拠は何か、なぜ融資が必要なのか、融資された資金は誰に支払うのか、いままで同様の理由で融資を受けたことはあるのかなどということを聴いて行きます。

中には、これらの質問にその場で答えられない方もいるので、月次試算表、見積書、事業計画書などがあれば、それらから必要な情報を読み取ります。それらの資料等がなければ、こういう資料を持ってきて欲しいと依頼したりします。本旨から外れますが、銀行は、よく、「目利き能力を発揮しなければならない」と言われますが、現実には、目利き能力を発揮するまでの段階に労力がかかっています。

話を戻して、ビジネスパーソンである経営者の多くが、本当に前述のように、きちんと融資申込ができないのかというように、疑問を感じる方も少なくないでしょう。もちろん、経営者の方の中には、上手に報告できる方もいますが、私の経験では、少数派です。大きな会社であれば別ですが、経営者自身がビジネスの現場にいる中小企業の多くでは、業績などについて報告をする相手は銀行しかいません。

そこで、大企業のサラリーマンのように、常に報告を行うということがないので、報告があまりじょうずではない方が多いのでしょう。とはいえ、私は、融資の申し込みを受ける銀行職員が、仕事をしやすくするために、経営者の方は、じょうずに報告ができるようにならなければならないということを述べようとしているわけではありません。

銀行にきちんと融資申込ができない経営者の方は、それが問題というよりも、会社の状況を適切に把握できていないので、事業を改善するための活動もできないことになると、私は考えています。自社の状況を報告できる状態にまとめるということは、銀行のためではなく、まず、自社の事業のために必要と考えるべきであり、また、それがじょうずにできるようにする能力も、経営者の方には欠かすことができません。

2021/11/27 No.1809

いいなと思ったら応援しよう!