ひとりあたり教育研修費50万円の会社
[要旨]
NISSYOは、ひとりあたり50万円の人材投資を行い、環境整備→技術力向上→売上と利益増加という一連の戦略により、大幅に業績を向上させています。このことは、人材投資を行うこと、そして、バランススコアカードに基づいた業績向上法の正しさを裏付けていると言えます。
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東京都羽村市にある、変圧器製造業の株式会社NISSYOの社長の、久保寛一さんのご著書、「ありえない!町工場」を拝読しました。久保さんは、3代目社長として、1993年に社長に就任しますが、当時の売上高1.7億円を、2020年は20億円に拡大したそうです。ちなみに、同社が銀行から受けている融資12億円のうち、7億円は無担保・無保証人が条件だそうです。工場購入のときに受けた融資は、その工場は担保がつけられたとのことなので、工場購入資金5億円が有担保・無保証人なのでしょう。
では、どうやって久保さんは売上高を増やしていったのかが気になるところですが、私は、最終的に、従業員への投資だと思います。同社の教育研修費は3,450万円で、これは、正社員ひとりあたり50万円になるそうです。もちろん、従業員教育だけでは売上は増えません。直接的な活動は、同社の技術力を向上させることで、売上を増やしているようです。
そして、技術力を向上させるために、環境整備(5S活動)、PDCAサイクルの導入、経営計画の策定とそれに基づく事業活動の実践を行うという、極めてオーソドックスな活動をしています。でも、その当たり前のような活動は、実際には、なかなか実践できないことも現実です。だから、同社は人材への投資に注力しており、ここが、他の会社と異なる点なのだと思います。
ちなみに、これは偶然なのかもしれませんが、同社が実践している、人材投資→環境整備→技術力向上→売上と利益増加という戦略のつながりは、バランススコアカードの戦略マップにある、学習と成長の視点→業務プロセスの視点→顧客の視点→財務の視点というつながりと一致しています。したがって、同社の戦略は、BSCによる事業改善の正しさを裏付けていると、私は考えています。
2021/11/9 No.1791