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日本の会社は『素人』が経営している

[要旨]

かつての日本の会社では、同質的共同体組織が前提とされ、「社員たちは同じ目的に向かい、一丸となり、協力し合い、一所懸命働く」ことが暗黙の了解と考えられていました。それは、プロダクトアウトの時代には適しており、経営者は、組織運営にはあまり関与する必要がなく、事業活動の指揮をとるだけですんでいました。しかし、現在のようなマーケットインの時代には、経営者は組織運営に注力し、外部環境に対応できる組織づくりをしなければならないものの、そのスキルを持つ経営者は少ないようです。

[本文]

今回も、遠藤功さんのご著書、「『カルチャー』を経営のど真ん中に据える-『現場からの風土改革』で組織を再生させる処方箋 」を読んで、私が気づいたことについて説明します。前回は、かつて、遠藤功さんが米国に留学したとき、競争戦略やマーケティングを学ぶつもりだったものの、米国人学生や、ほかの留学生たちは、組織論に大きな関心を持っており、それは、米国では、組織マネジメントをしっかり学ばなければ、いい経営者やマネージャーにはなれないと考えているからということを説明しました。これに続いて、遠藤さんは、多くの日本の会社では、マネジメントの「素人」が経営をしていると述べておられます。

「それに対し、日本的経営による同質的共同体組織を前提としていた日本企業では、『社員たちは同じ目的に向かい、一丸となり、協力し合い、一所懸命働く』ことが暗黙の了解と考えていた。そんな家族的な雰囲気の会社では、小難しい組織マネジメントなどは不要であり、家父長の下で社員たちが経営の都合のよいように勝手に組織運営してくれることを期待できた。家族的経営とまではいかなくても、就職するとはひとつの『村』に入るようなもので、ほかの『村人』と仲良くし、『村の掟・村の秩序』を守ることが当たり前であった。

だが、その前提はすでに大きく崩れている。日本においても人の流動化は加速し、ジョブ型人事制度を導入する企業も出はじめ、ダイバーシティが尊ばれるようになった。最初から最適化され、活性化された組織などは存在しない。だから、組織は適切にマネジメントされなければならない。しかし、多くの日本企業では、いまだに組織マネジメントを軽視し、価額的、合理的な知見を持ち合わせていない『素人』が経営をしている。そんな状況では、組織が劣化するのは当然のことでうある」(56ページ)

かつて、日本の会社には、年功序列・終身雇用・企業別組合の日本的経営三種の神器があり、それが日本の経済発展に大きく貢献してきました。しかし、当時のマーケティングコンセプトは、生産志向・製品志向・販売志向といった、プロダクトアウトの活動が行われていました。そのような活動をする場合、上意下達で動く組織が適してました。そこで、「社員たちは同じ目的に向かい、一丸となり、協力し合い、一所懸命働くことが暗黙の了解となっている」日本の会社では、「組織マネジメント」に関し、経営者の方はほとんど関与することなく、「生産活動」や「販売活動」に専念するだけですみ、また、そのことが、日本の経済発展に有利となったのでしょう。

しかし、その後のマーケティングコンセプトは、顧客志向(マーケティング志向)、社会志向(ソーシャルマーケティング志向)といった、マーケットインの活動を行わなければ、競争に勝つことが出来なくなってきました。そのような活動においては、上意下達の組織は適しません。権限委譲を進め、下意上達の組織でなければ、マーケットインに基づいた活動が困難になります。さらに、かつての「経営者」たちは、組織マネジメントを学ぶ必要がほとんどなかったことから、下意上達の組織を育成したり、運営したりすることができない、というよりも、マネジメントの「素人」ばかりが会社を経営している状態になっているのだと思います。

もちろん、日本も徐々にマネジメントを学ぶ経営者の方が増えてきていますが、その度合いは、業績に直結してきていると思います。というのは、かつて、プロダクトアウトの時代は、何を作って売るかが業績の鍵になっていましたが、現在のようなマーケットインの時代は、経営者のマネジメントスキルが業績の鍵になっているのではないでしょうか?例えば、最近は、同じ業種の会社同士でも業績が異なることがありますが、それは経営者のマネジメントスキルの差と言えるのではないかと思います。

2023/9/19 No.2470

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