『何も聞かないでください』オーラ
[要旨]
ピューロランド社長の小巻さんは、業績がかんばしくなかったピューロランドを改善するには、従業員にやる気があるのに、それを十分に発揮できていないことにあったということを見抜き、毎日、10回の朝礼を開くことで、従業員の接客能力を高め、顧客からの評価を高め、業績を回復することに成功しました。
[本文]
サンリオピューロランドを運営する、サンリオエンターテイメントの社長の、小巻亜矢さんのインタビュー記事が、日経ビジネスに載っていました。この記事には、従業員の意識改革の柱にとなった、1日10回以上の朝礼を実施することにしたときの経緯について書かれていました。「2014年に顧問に就任した頃は、明らかにスタッフ同士が連携不足でした。ショーの内容を知らなかったり、園内の案内板や配布物の文字に統一感がなかった。
(小巻さん自身がピューロランドを)客として3回訪れて、3回とも連携が取れていないと感じました。(中略)そこで、横の連携が取れればずいぶん変わると思って(顧問に)就任したので、一人ひとりの現場の声を聞くところから始めました。すると、『どうせダメです』とか『言ってもどうせ変わらない』と、『どうせ』という言葉が何度も出てきた。それは期待の裏返しであって、みんなにピューロ愛があるんだと分かりました。『良くしたい』という方向にかじを切ればきっと良くなるという確信をすぐに持てました。(中略)
(朝礼の実施は)最初は反対もずいぶんありました。朝早く来てもらう分人件費も上がるわけですし。(中略)当時はスタッフがみんな暗い顔をして『私には何も聞かないでください』というオーラを出していましたから(笑)。どうしても必要だから半年だけやらせてほしいと言って始めました。(中略)(そして、顧問に就任してから)半年後ぐらいでしょうか。ネットでの反応を分析しているスタッフが、『小巻さん、これ見てください』と言ってきたんです。それを見ると、『スタッフが温かい』と書いてあった、本当にうれしかったですね」
ピューロランドは、サービス業なので、その商品は「従業員」です。でも、従業員は意欲があるのに、力を発揮できないでいたことを小巻さんは見抜き、1日10回の朝礼によって、くすぶっていた従業員の意欲を見事に引き出すことに成功したのでしょう。コロンブスのたまごのようなことかもしれませんが、難しくて複雑な戦略を実践することだけが、競争力を高めることではないということを、改めて感じました。
2022/3/6 No.1908
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