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[要旨]

経営戦略には、主に社内の資源配分を最適化する全社戦略、各事業の競争力を最大化する事業戦略、事業戦略を側面から支える機能別戦略の3つの階層があります。そして、経営者には、各戦略の整合性を維持し、成果が最大になるよう管理する役割があります。

[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの遠藤功さんのご著書、「経営戦略の教科書」を読んで、私が気づいたことについて述べます。前回は、戦略という言葉を最初に使ったのは、アルフレッド・チャンドラーであり、彼は、1962年に出版した「経営戦略と組織」の中で、戦略を、「企業の長期的目標と目的の決定、行動指針の採用、目的を達成するために必要な資源配分」と定義したということについて説明しました。これに続いて、遠藤さんは、経営戦略には3つの階層があるということについて説明しておられます。

「経営戦略は、大きく3つの階層ー『全社』、『事業』、『機能』に分けて考えることができます。企業全体として、どのような方向性に基づいて、どのような事業に取り組んでいくのかという全体像を示すのが、『全社戦略』(Corporate Strategy)です。個々の事業単位で、どのような価値創造をし、差別化を実現するのかを明らかにするのが、『事業戦略』(Business Strategy)です。さらに、それぞれの事業戦略は、技術・開発、購買、生産、販売、財務、人事など、各機能部門レベルの『機能別戦略』(Functional Strategy)に落とし込まれます。

ここで大事なのは、階層間の『整合性』です。3階層の戦略は、それぞれが独立したものではなく、相互に密接に関連しています。階層別の戦略に落とし込んでいく中で、それぞれがバラバラな存在ではなく、互いに整合性のとれた一貫した戦略になっていなければなりません。現場レベルで遂行される機能別戦略が、経営トップが策定した全社戦略と有機的につながったものでなくてはならないのです。

例えば、『高級車でチャンピオンになろう』という全社戦略が打ち出されているのに、営業の現場が、『売れ筋である低価格車を売りたい』などと考えて仕事をしていたのでは、経営戦略は機能不全をきたします。そうした不整合が起きないように、戦略の階層間の一貫性、整合性をどのように担保していくのかを考え、首尾一貫した経営戦略を練ることが大切です。私が経営戦略を『合意された組織の目標』と呼ぶのは、まさに、この整合性、一貫性が大切だと信じているからです」

全社戦略は、会社が複数の事業を営んでい場合に、事業ごとの戦略の間で調整が行われ、会社として最適な結果を導くための戦略です。では、どのような方法で調整が行われるのかというと、プロダクト・ポートフォーリオ・マネジメント(PPM)や、バリューチェーン(価値連鎖)分析により検討する方法です。一方、事業戦略は、個々の事業を対象とする戦略であり、その事業が最大の成果をあげることができるようにすることが目的です。

そして、成果を最大化させるためには、ライバルとの競争に勝つことが主な目的であることから、事業戦略は競争戦略でもあると言えます。その例としては、米国の経営学者のポーターの提唱した、「3つの基本戦略」や、同じく米国の経営学者のコトラーの提唱した、「競争地位別の戦略」などがあります。最後に、機能別戦略は、マーケティング戦略、生産戦略、購買戦略、研究戦略、人事戦略、財務戦略などです。そして、遠藤さんも、各戦略間の整合性が重要とご指摘しておられます。

そのためには、まず、全社戦略を立案し、それに沿って事業戦略を立案するという手順を踏むことになります。これは、事業戦略は全社戦略の下位戦略と言えます。さらに、機能別戦略は、事業戦略を側面から支えるという位置づけになるでしょう。ここで容易にご理解いただけると思いますが、経営者の方は、整合性のとれた各戦略を立案し、さらに、実際にそれらを実践してみて齟齬が起きていないかを管理する役割があります。なぜなら、齟齬が少ない方が、会社全体の効率性が高まり、それは、最大の成果につながるからです。

2024/3/17 No.2650

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