日本銀行は政府の一部
[要旨]
日本銀行は、物価と金融システムの安定のために活動をしている、広い意味での政府の一部の機関です。したがって、そのための活動の結果が、仮に赤字になったとしても、その赤字を批判することは妥当ではありません。
[本文]
前回は、一橋大学の野口名誉教授が、東洋経済オンラインに寄稿した記事に関し、日本銀行は、当期剰余金は国に納付することになっていること、自己資本比率は、10%程度に運営するよう規定されていることなど、特殊な規定があることから分かるように、債務超過になるかどうかということを議論することに意味はないということを説明しました。今回は、これについて説明を続けたいと思います。このような規定があるのは、明文化されていないものの、日本銀行は政府の一部であるという考え方によるものだと思います。
もちろん、日本銀行の行う金融政策の決定に関しては独立して行なっていますが、そのことをもって、日本銀行は政府の一部ではないということにはなりません。政府の機関の中にも、検察庁や、公正取引委員会など、独立性の高い機関もありますが、それらの機関も政府の一部です。そして、日本銀行の活動の目的は、詳細な説明は割愛しますが、「物価の安定」と、「金融システムの安定」を図ることです。要は、日本銀行は、日本経済の安定的な発展のために活動をしているのであり、まさに、政府の一部として活動しているわけです。
したがって、このような日本銀行の活動の結果に関し、「債務超過に陥ってしまう」とか、「国庫納付金がなくなる」ということを指摘することは、妥当ではないと言えます。確かに、民間銀行が放漫経営をした結果、多額の損失を計上した場合、その経営責任は問われるべきです。でも、日本銀行は、日本経済の発展のための活動をしているわけですから、その活動の結果が赤字になったとしても、それを批判することは筋違いであり、物価が安定したかどうかや、金融システムが安定したかどうかで評価されなければならないはずです。
とはいえ、旧大蔵官僚であった野口さんが、ここまで私が述べたことは理解していると思います。それを分かっていて、あえて、日本銀行の業績に問題があると指摘していると、私は想像しています。では、なぜ、野口教授がそのようなことをしようとしているのかというと、これも想像ですが、政府が国債の発行を増やす流れを変えようとしているのだと思います。私は、国債の発行が減ることはよいことだと思いますが、そのために、筋違いなことを根拠として国債の発行を主張をすることは、却って、そのような考え方の支持を減らすことになると思います。
2022/12/17 No.2194