「良いものを安く」は通用しない時代
[要旨]
「良いものを安く」という戦略をとる経営者の方は少なくありませんが、それは、人口が増加する時代であるということが前提であり、人口が減少している現在は、高い付加価値を得るための戦略をとるという、「経営レベルの競争」に移らなければなりません。
[本文]
元外資系証券アナリストで、10月に、内閣府の成長戦略会議のメンバーになった、デービッド・アトキンソンさんの著書、「日本人の勝算」を読みました。(ご参考→ https://amzn.to/3ecT7qE )トキンソンさんは、著書の中で、「日本の経営者の多くは、良いものを安く売れば事業が成功すると考えているが、それは、日本の人口が増加するという前提での戦略であり、また、そのような戦略は、労働者のスキルに頼る方法でもあるから、能力のない経営者でも実践できる戦略である」と述べておられます。
私も、アトキンソンさんと、同じことを感じていました。なぜなら、いまの日本は、人口が減少している上に、性能のよい製品で満ちあふれており、製品の性能や価格では勝負がつかないことは明白になっているからです。とはいえ、このことは、私が述べるまでもなく、多くの方が理解しておられることだと思います。しかし、その一方で、いま、日本でデフレが進行し、なかなか抜け出すことができないでいる一因は、「良いものを安く」の方針から抜け出すことができない会社が多いからということも、事実だと思います。
では、「良いものを安く」から抜け出すにはどうすればよいのかというと、その方法はひとつだけではないと私は考えていますが、アトキンソンさんは、従業員のスキルを高め、付加価値の高い製品を提供できるようにすることだと述べています。すなわち、人材投資で差をつけるということであり、例えば、いま、日本は、国民のITリテラシーでは、外国に差をつけられており、そのような面で、日本には改善の余地はあると、私は考えています。
しかし、そこまで大がかりな戦略でなくても、以前、私が、経営コンサルタントの松下雅憲さんからきいたのですが、従業員満足度を高めることを通して、顧客満足度を高めるという方法で事業を改善し、効果が得られたという実績も示されています。(ご参考→ https://bit.ly/3eebewK )いま、業績が回復しないと悩んでいる経営者の方は少なくないと思いますが、その要因のひとつは、前述のように、「良いものを安く」という「事業レベルの競争」から抜け出せないからだと思います。新しい経営環境に移った現在は、「経営レベルの競争」に移らなければ、消耗戦に陥ったまま、そこから抜け出せなくなってしまうでしょう。
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