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[要旨]

価格の決め方においては、販売数量が少なくても、価格を高くする方が、収益額が大きくなることもあります。したがって、販売数量を増やすことにこだわりすぎて、価格を低めにすることが、必ずしも妥当であるとは限りません。また、妥当な販売価格を決めるためにも、より精度の高い収益管理を行うことが重要です。

[本文]

今回も、小阪裕司さんのご著書、「『価格上昇』時代のマーケティング-なぜ、あの会社は値上げをしても売れ続けるのか」を読んで、私が気づいたことについてご紹介します。小阪さんは、商品の価格を決めるための視点として、「収益最大化ポイント」について説明しておられます。

「もし、ある商品を1万円で売ったら、100人が買ってくれたとする。一方、5万円で売ったところ、30人が買ってくれた。普通に考えれば、収益がより大きいのは、『5万円で30人』であり、こちらを選ぶべきだということになる。しかし、これを意外と忘れてしまっていることが多い。すなわち、『なるべくたくさんの人が買ってくれたほうがいい』という考えにとらわれてしまうのだ。これもまた、『大量消費時代の発想』と言えるかもしれない」(116ページ)

例外的に、政策的な判断から、あえて利幅を少なくして商品を販売する必要があるということもあります。でも、一般的には、小阪さんのご指摘の通りだということは、ほとんどの方がご理解されると思います。しかし、中小企業経営者の方の多くは、価格は低い方が望ましいと考えてしまいがちのようです。これについて、私が中小企業のご支援をして来た経験から感じることは、中小企業経営者の方の多くは、まず、商品を購入してもらうことを最優先してしまうということが挙げられると思います。

その理由は、経営者としては、利益が得られるかどうかよりも、商品が売れるかどうかのほうに関心があるからだと思います。すなわち、価格が高い方が多くの利益が得られると分かっていても、その価格が理由で商品が売れにくくなるのであれば、たとえ利益が少なくても確実に売れる方が安心できるという心理が働いているのだと思います。さらに、収益管理をしていない会社においては、経営者が採算がとれると思って設定していた価格が、実は、後になって不採算だったと分かったり、または、ずっとそれに気づかないまま、不採算の取引を続けてしまうということもあります。

そして、やはり収益管理をしていないと、価格を高めに設定しても、問題なく商品は売れ続けるということにも、気づきにくくなってしまいます。したがって、価格をなかなか上げられないという悩みを持っている方は、商品の採算管理を行うことで、より、適切な価格設定が実現できると、私は考えています。そして、それは、より大きな利益を得ようと、日々、努力している役員、従業員の方たちにも報いることになると思います。

2023/1/17 No.2225

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